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テリー主将降格&カペッロ監督辞任。
災い転じて新生イングランドが誕生!? 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2012/02/17 10:30

テリー主将降格&カペッロ監督辞任。災い転じて新生イングランドが誕生!?<Number Web> photograph by AFLO

次期主将候補は、ジェラードかパーカーが有力。しかしカペッロが信頼を寄せていたように、テリーのキャプテンシーは絶大。後任は求心力を発揮することができるのか

 英国時間2月8日夕刻、ファビオ・カペッロがイングランド代表監督を辞任した。

 同夜のBBCテレビが、「ノー・マネージャー、ノー・キャプテン」とニュースを伝えたように、代表キャプテン降格を巡る権威の衝突が招いた監督退任だった。

 イングランド・サッカー協会がジョン・テリーにキャプテン降格を命じたのは、その5日前のこと。テリーには、昨年10月のリーグ戦で、QPRのアントン・ファーディナンドに対する人種差別発言の疑いが持たれていた。試合映像を見た一般市民からの通報により、チェルシーのキャプテンは社会秩序法違反で警察の捜査対象となり、12月には起訴処分を受けた。当初、今春までに決着がつくと思われた裁判は、今月1日に被告側の申し立てが認められて7月9日までの延期が決定。すると、テリーがEURO2012期間中も容疑者であり続ける事態を嫌った協会は、その48時間後にキャプテン降格を決めた。

 容疑の内容が、英国では根の深い人種差別問題であることから、協会による処分には、各方面から勇断との声が寄せられた。見方を変えれば、法の裁きを待たずに協会が独自にテリーを裁いたとも受け取れる。だが、肌の色が異なる選手が混在する母国代表のチーム事情や、サッカー界で人種差別撲滅運動をリードする国が、差別行為の容疑者をリーダーとして国際大会に出場するという道徳的な矛盾を考えれば、テリー続投の悪影響を防ぐための判断は理解できた。世間では、代表落ちを命じるべきだとする、より厳しい意見も聞かれたほどだ。

テリーを擁護するカペッロは降格処分に辞任で抗議。

 しかし、カペッロは納得できずに監督辞任を選んだ。テリーのリーダーシップを指揮官が高く評価していたことは、2年前の不倫疑惑騒動で降格を命じた後、キャプテンに再指名した事実が物語る。

 その上、役員14名が満場一致で決めたテリーの処分に、監督は意見すら求められていない。

 公式発表の前に電話で決定を伝えられただけの指揮官が、プライドを傷つけられたことは言うまでもない。協会は、降格を命じたキャプテンと同時に、監督の格をも下げてしまった。

 協会の処分発表に「疑わしきは罰せずという姿勢を貫き、テリーをキャプテンとして大会に臨むべきだ」と反論したカペッロの発言は、「キャプテンの処遇は監督の自分が決めるべきだ」と言っているようなものだ。

 協会が処分を決める前に、テリーが自らキャプテンを降りていれば、協会と監督との対立も、辞任劇も避けられただろう。だが、裁判を控えているテリーが、キャプテンの辞任は罪の自認と受け取られ、自身にとって不利になると考えたとしても無理はない。テリーは、QPR戦直後から、起訴が決まった後も無実を主張し続けているのだ。

【次ページ】 南アW杯後にカペッロを更迭しなかった協会にも非が。

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