「決められた」以上の仕事をする日本人スタッフたち。

　決められたスペックを、決められた数だけチームに供給し、そのタイヤがきちんと機能しているのかどうか、決められた値をサーキットで計測し、タイヤがどのような状態にあるのかをチームに報告する。それがタイヤエンジニアの「決められた」仕事である。だが、ブリヂストンは「決められた」仕事以外の分野へも首を突っ込み、チームと積極的な関係を築いていった。

　今井はマクラーレン入りした当初は専門分野であるタイヤを担当していたが、タイヤの性能を引き出すためには車体側の協力も必要だということをチーム内に説き、2年間の活躍が認められて、昨年半ばからビークルエンジニアリング部門のトップに抜擢された。松崎もフェラーリ担当となる'05年以前に、イタリアへ出向いてフェラーリの車体エンジニアとともに、相互理解を深める研究を行った経験を持つ。

元ブリヂストンの3人が戦う第二のレース人生。

「マクラーレンに移籍してから3年。チャンピオンから遠ざかったままなので、今年こそ、ぜひタイトルを取りたい」（今井）

「ブリヂストン時代は大きな組織の一員として戦っていましたが、いまは成功も失敗もチームのみんなと分かち合える。責任も大きいですが、その分やりがいもある」（松崎）

　マクラーレン＝今井、フォース・インディア＝松崎。2人は、かつてブリヂストンで仕事していた姿を忘れさせるほど、チームに溶け込んでいる。今年からフェラーリに加入した浜島とともに、彼ら元ブリヂストン3人が、第二のレース人生で「チームとともに」どんな活躍を披露するのか楽しみである。