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西武の優勝を担う未完の大物投手。
菊池雄星と大石達也の覚醒なるか。 

text by

田口元義

田口元義Genki Taguchi

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2012/02/09 10:30

西武の優勝を担う未完の大物投手。菊池雄星と大石達也の覚醒なるか。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

2月に行われる予定の紅白戦では、さっそく菊池雄星と大石達也の先発での対決も予定されているという西武ライオンズの春季キャンプ。「アンダースローでもサイドスローでも、とにかくいい真っすぐを投げたい」と、連日140キロ越えの投球に自信をのぞかせる菊池

オーバースロー変更にカーブ習得という菊池の狙い。

 だが、今季の彼は大きく変わった。

 それは、見た目でも明らかだ。「いいピッチャーの連続写真などを見ると、肩のラインよりも肘が上がっている」という理由から、シーズンオフに自らスリークォーターからオーバースローへ投球フォームを変えた。さらに、投球の幅を広げるため、オーストラリアでの野球留学中にカーブを覚えたのだ。

「彼にとって一番いいフォームはスリークォーターなんだろうけど、カーブを覚えたからオーバースローのほうがいい。ボールに角度がつくから。どうせなら本物のカーブを投げてほしいよね。全盛期の工藤(公康)さんのような落差のあるカーブが理想かな。ストレートも今はムラがあるけど力があるのはいいこと。フォームが固まってしっかり腕を振れれば三振が増えると思う。見ているほうからしても、今のほうがかっこいいよね」

 この大胆な改革を渡辺監督は評価する。しかし菊池は、冷静に今の自分を受け止めた上で、今季の目標を口にした。

「今まで結果を出せていませんから。厳しい争いになることは分かっているけど、開幕ローテーションに入れるよう、これからの実戦でアピールしていきたい」

ステップアップの時期にいる大石への期待。

 2年目の大石達也は、菊池以上の気概をキャンプ開始早々から見せた。

 初日からブルペンに入りチーム最多の113球。翌日も捕手を座らせ70球以上の投げ込みを行なった。隣で投げた菊池ですら、「大石さんの速いボールを見ていると意識して力んでしまった」と驚くほど、その投球には熱がこもっていた。

「彼が一番、このキャンプに賭ける気持ちは強いと思うよ」

 指揮官は、大石の覚悟をそう代弁する。

 早稲田大の同期である斎藤佑樹以上の素質と評価された右腕だったが、1年目の昨年は開幕早々に故障し一軍登板はゼロ。周囲の期待を大きく裏切ってしまった。

 結果を出せていない現実はある。だが、渡辺監督は、「それでも、二軍では6勝しているんだよ。1年目はまだまだプロで通用するボールじゃなかっただけ」と擁護する。

「大学で一番いいときっていうのは、きっと何も考えないでも結果を出せていたんだろうね。プロではスピードが出ないとみんなから言われるでしょ。だから、今は彼なりに試行錯誤している段階だと思う。ハマったときは良いボールを投げるんだから、これからステップアップしていってほしいよね」

【次ページ】 鳴り物入りで入団した二人の競争意識が覚醒を促す。

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