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深刻な売り上げ減でも、
貫くべき「優勝劣敗」の掟。
~JRA「東西格差」是正案への疑問~ 

text by

片山良三

片山良三Ryozo Katayama

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photograph byKYODO

posted2012/02/05 08:00

深刻な売り上げ減でも、貫くべき「優勝劣敗」の掟。~JRA「東西格差」是正案への疑問~<Number Web> photograph by KYODO

 熊本県の荒尾競馬が昨年末の開催を最後に83年の歴史を閉じた。バックストレッチの向こう側にキラキラ光る有明海が広がる風光明媚なロケーションで知られる、文字通りのローカルな競馬場。長きに渡って地域の経済に貢献してきたというのに、赤字に転落するとその途端にお荷物扱いされてしまうのは、公営競技の宿命なのだろう。

 実は荒尾競馬は、賞金や出走手当てなどを極限まで引き下げ、2010年度の収支を13年ぶりに黒字に転化させている。しかし、それは産業として成り立つ構造ではなかった。1着賞金はほとんどのレースで僅かに10万円。勝利という最高の結果を出したとしても、馬主8万円、調教師1万円、騎手、厩務員が5000円という収入しか得られないのでは、誰も幸せになんかなれはしない。馬主が荒尾に馬を預ける意味をなくしてしまったことで土台が崩れてしまい、主催者(熊本県と荒尾市)から廃止を宣言されるより先に、内部から壊れていったというのが今回の悲劇の真相のようだ。

賞金獲得額の「東西格差」を平均化しようとするJRAの新規定。

 中央競馬も、これを対岸の火事と見ている余裕はない。売り上げは'97年の4兆6億余円をピークとして、以後14年連続で下がり続けており、'11年はほぼ半減の2兆2935億余円という深刻な数字が出てしまった。聖域とされた賞金の減額に手をつけざるを得なくなり、各種手当ても軒並み削られている。これは経営原資の縮小から発生したものなので仕方のないところではあろう。

 しかしここへ来て、長く続く関西馬の優位からくる賞金獲得額の「東西格差」をも、ルールの操作によって歯止めをかけようとしている動きが見えることについては疑問を感じている。それは今年中に導入されるという、関東関西の主場(東は東京、中山、西は京都、阪神)における下級条件戦(未勝利と古馬500万)について、遠征馬を除外対象の先頭に置くという新規定だ。一見平等のように見えるが、ご承知のように関西馬ばかりが関東に乗り込んで勝ち星をさらっているのが現状。それを防ぐことで、少しでも賞金獲得額における東西格差を平均化しようという意図が透けて見える。

「優勝劣敗」が勝負の世界の掟。その原則を歪めると、夢が萎んで、結果ファン離れに繋がるのではないだろうか。

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