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センバツ出場校の見所を徹底解説。
2012年、遂に“白河の関越え”なるか!? 

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小関順二

小関順二Junji Koseki

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photograph byNIKKAN SPORTS/AFLO

posted2012/01/31 10:30

センバツ出場校の見所を徹底解説。2012年、遂に“白河の関越え”なるか!?<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS/AFLO

センバツ出場を決めて歓喜する花巻東の選手たち。エースの大谷翔平は「自分たちの代は岩手出身者だけ。岩手のために力を発揮して、日本一というカタチで岩手の方々に届けられれば」と野球による復興支援を誓った

190センチ以上の2人の本格派右腕が抱える弱点とは?

 この190センチ以上ある本格派右腕2人のピッチングがセンバツの覇権を左右することは間違いない。それでも、声を大にして花巻東と大阪桐蔭を優勝候補の筆頭と言えないのは、花巻東の場合は大谷が昨秋の東北大会で一度も登板していないからだ。佐々木洋監督の「将来があるので投げさせない」という方針で大会に臨んだわけだが、その左股関節故障の治り具合なのかがまだよく分からないのである。

 大谷が負った故障の正式名称は、左股関節の「骨端線損傷」。骨端とは骨の“新芽”とも言えるところで、骨が作られる場所と言ったほうがわかりやすい。ここが離開する(壊れる)ことで痛みが起き、投げられなくなるわけだが、発症後何もしなければ治る。しかし、痛みがなくなったからといって完治しない1、2カ月の内に投げさせれば痛みは再び発症する。この完治のプロセスに見誤りがなかったか気になる。完治していれば、東北勢悲願の優勝旗の“白河の関越え”が現実のものになる。

 大阪桐蔭・藤浪の場合は肉体的には問題がない。抱えているのは精神的な不安定さだ。昨年夏の大阪大会決勝は東大阪大柏原を6回まで2失点に抑えておきながら後半3イニングで5点失い(うち2失点は後続の投手)、甲子園への道を閉ざされてしまった。

 昨年秋の近畿大会は準々決勝、天理相手に6回表まで3対2とリードしながら、6、7回に6点を失い、4強進出を阻まれている。戦前の評価は、いずれも大阪桐蔭の圧倒的有利。しかし、有利と言われれば言われるほど結果は悪い。このムラッ気のある精神面がどこまで整備されているか、意地悪く言えば指導者たちの腕の見せ所になる。

他にもいるAランク校は、どこも個性派揃いで要注意!

 超高校級右腕を抱える2校以外でも有力校はいる。

 Aランクの評価をしていいのは、光星学院、作新学院、愛工大名電、九州学院の4校だ。

 光星学院は明治神宮大会決勝、愛工大名電戦の粘り強い戦いが印象に残る。表の攻撃で点を取られると裏の攻撃で取り返すという場面が3回もあった。

 まず、3回表に1点取られて0対2になるとその裏に1点返し、5回表に1点取られて1対3になるとその裏に1点返し、7回表に2点取られて2対5になるとその裏に3点返し同点とし、8回裏には1点取って初めて6対5とリードして、9回表は走者を1人出しただけで愛工大名電打線を押さえ込んだ。かつてPL学園がやったような戦い方で、東北のチームのレベルアップがリアルに感じ取れた。

 持ち味は打線にある。天久翔斗、村瀬大樹、田村龍弘、北條史也、武田聖貴と続く上位打線は全国屈指と言ってもいい好打者揃いで、とくに3、4番の田村、北條は愛工大名電の超高校級左腕、濱田達郎からそれぞれ2安打放ち、田村は1打点、北條は2打点を記録した。

【次ページ】 好投手とチーム伝統ともいえる脚力を誇る愛工大名電。

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