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Jリーグが進歩するために学ぶべき、
世界最高のコンディショニング理論。
~【第3回】 PTPのメニューと実践~ 

text by

木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

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photograph byJ-Dream

posted2012/01/03 08:00

Jリーグが進歩するために学ぶべき、世界最高のコンディショニング理論。~【第3回】 PTPのメニューと実践~<Number Web> photograph by J-Dream

ヒディンクの右腕として、2002年韓国代表の肉体改造に取り組んだレイモンド・フェルハイエン。今回、サッカーを通じたオランダと日本の国際交流に努める『J-Dream』主催で行なわれたセミナーの講師として来日。来年も今回同様のイントロダクションセミナーと、今回の参加者を対象としたアドバンスセミナーを開催予定だという

選手の体調は常に変化するのでプランは臨機応変に。

 ここまで紹介してきたオーバーロード・トレーニングは、レイモンド理論の一部分に過ぎない。こういうトレーニングをベースに、コンディショニングを6週間のスパンで向上させて行くサッカーの「ピリオダイゼーション」こそが、彼の真髄だ。

 たとえば土曜日に試合があったら、日曜日はリカバリーの日に当て、月曜日はオフとする。そして火曜日は戦術トレーニング、水曜日に「フットボールスプリント」、「4対4」、「11対11」といったコンディショニング・トレーニングを行い、木曜日と金曜日に再び戦術トレーニングをする。

 水曜日にコンディショニング・トレーニングをするのは、直近の試合からある程度体が回復しているうえに、次の試合まで時間がある日だからだ。6週間を1周期として、1シーズン右肩上がりにコンディションが高まっていくように計画する。オーバーロードの状態を練習で実現するには、体調が100%でなければいけない。80%の状態で6回練習するより、100%の状態で4回練習する方がはるかに意味がある。

 そのため、練習量を多くしすぎないように気をつけるのが特徴のひとつだ。当然、選手の体調は常に変化するので、日々、臨機応変にプランを修正することが求められる。このピリオダイゼーションの詳細については、また別の機会にきちんと触れたい。

レイモンドの理論とほとんど同じ思想で指導しているモウリーニョ。

 実はレイモンドの「ほぼすべてのコンディション・トレーニングを、ボールを使って行う」という結論に、まったく独立に達した指導者がいる。レアル・マドリードを率いるモウリーニョ監督だ。モウリーニョはシーズン前の合宿でも、走りこみといった従来のフィジカルトレーニングは一切行わず、ボールを使ったメニューだけで体作りを行う。

 レイモンドは、この名将の存在を頼もしく感じていた。

「きちんとサッカーを分析して、そこからコンディショニングを考えれば、必ずそういう結論にいたるということ。新しい理論を広めていくのは本当に難しいことなので、モウリーニョが同じ発想でやっているのはすごく嬉しい。ただ、ひとつ彼と異なるのは、自分は理論を人に伝えるために、よりわかりやすい形に体系化していることだ」

【次ページ】 「大事なのは監督自身が、自分のやり方を見つけること」

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