東洋に対して、ライバル校はどう立ち向かうのか。

　タイトル奪還を期す前々回王者に対して、ライバル校はどう立ち向かうのか。

　上位10選手の1万mの持ちタイムが、平均で28分40秒と最速を誇る駒澤は、東洋と並んで優勝候補の双璧に挙げられる。

　過去2年は「育成の年」と割りきっていた大八木監督も、今年は「勝負したい」と決意を新たにする。

　6度の優勝実績を持つ名将は、どんなレースプランを描くのか。その胸のうちをちょっとだけ明かしてくれた。

「やはり前回の早稲田ですよ。山で3分（詰められる）の計算をしながら、どれだけ前半に稼ぐか。あとは復路で逆転して、逃げ切れるだけの選手を置けるかどうかですね」

　駒澤の特徴として、復路に強いことが挙げられる。総合優勝のときには必ず復路優勝をセットで成し遂げているが、今回はその必勝パターンを崩してまでも往路に主力をつぎ込むのだろうか。

「もちろん復路で強いイメージは残したい。自分の勝ちパターンをいかにアレンジして東洋を倒すかです。うちが勝つときは必ず9区に区間賞を取るような強い選手がいました。今回はとにかく攻めていかないと勝てないでしょうけど、復路でも勝負できるだけの頭数はできたと思ってます」

　特殊区間と言われる5区、6区に経験者を残し、スーパールーキーの村山謙太も上り調子。エース格の窪田を9区に持ってこられるようであれば、駒澤は強いだろう。

故障者が徐々に戻りつつある早稲田。

　全日本で両校に大きく差を広げられた早稲田も、故障者が徐々に戻りつつある。

　10日に行なわれた記者発表会の席では「12月に入って長い冬眠からやっと目覚めた。あと1年は怪獣がいますので、監督車で耐える時間を楽しみたい」と渡辺監督が独特の言い回しで抱負を語った。

　さらには、今季から東海大の監督に就任した両角速氏が、1万mで日本選手権2位の実力を持つ「村澤明伸の5区起用」をほのめかすなど、情報戦は佳境を迎えている。

　いずれの監督も柏原の想定タイムを従来平均と読んでいるようだが、それを見越したように、柏原はこう話す。

「また5区を走るとして、確実に76分台は行きたいです！」

　76分台はまだ、誰も走ったことがない未知の領域だ。もしも宣言通りにそのタイムで山を駆け上れば、東洋は絶対的なアドバンテージを持つことになる。

　これまで8人抜き、6人抜き、2人抜きと追いかけるイメージが強いだけに、もしも逃げる展開になれば柏原はそう速く走れないのではないかという声もある。

　襷をトップで受け渡されたときのイメージはありますか。そう問うと、返ってきた答えがまた奮っていた。

「それでも守らないです。往路が終わった時点で今年はムリだって思わせるくらいに、差を広げたいですね」

　逃げる柏原も、1度は見てみたい気がする。

　かつてない展開を見せたとき、各指揮官の思惑はどう転ぶのか――。いずれにせよ今回も、“山”の駆け引きから目が離せない。