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ミズノスポーツライター賞、
受賞作品の傾向と今後。
~最優秀賞は宇都宮徹壱氏~ 

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posted2010/04/02 06:00

ミズノスポーツライター賞、受賞作品の傾向と今後。~最優秀賞は宇都宮徹壱氏~<Number Web> photograph by Number編集部

『フットボールの犬 欧羅巴1999-2009』 宇都宮徹壱著 東邦出版 1429円+税

異文化であるスポーツをどう日本化するかが肝要。

 個人的に思うことですが、阪神大震災や地下鉄サリン事件のあった1995年というのが日本の社会が大きく変わった年。山際淳司さんが亡くなったり、野茂英雄がドジャースに行ったりと、雑誌ナンバーにとっても転換期と言えますが、ひと言で言うとグローバル化、ボーダーレスの時代に日本が入った。野茂はその象徴で、スポーツがボーダーレスになるにしたがい、ライターもそうなっていった。日本にとってのスポーツはある種異文化で、その文化をどう日本化するかが目の付け所だと思うんですが、たとえば今回の柳澤さんの作品も、柔道や相撲など日本独自に発達した格闘技の中に、レスリングという異文化をいかに移植し、育てたかを、トルコや中央アジアにまで入り込んで取材し、丹念に描いている。

 宇都宮さんの作品もフェロー諸島の話なんか面白かったし、広い視野を持った方ですね。昔、宮本常一が書いた『忘れられた日本人』という素晴らしい本があるんですが、これは筆者が日本全国津々浦々を歩き、古老の話を聞き書きしたもの。我々の知らなかった日本が本の中にあると思ったものですが、宇都宮さんに今後期待するのは、世界中にいるサッカー好きの古老、彼らのライフスタイルが浮かび上がるような取材をしてほしい。サッカーという枠を超えてそれぞれの場所で生活する人たちの声を採集してもらえるのでは、と期待しています」

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