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プレミア優勝候補筆頭となったマンC。
その驚愕の変貌ぶりを徹底検証する。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2012/01/03 08:01

プレミア優勝候補筆頭となったマンC。その驚愕の変貌ぶりを徹底検証する。<Number Web> photograph by AFLO

復調著しいアーセナルとの激戦を制し、首位を守ったマンC。アグエロ、ジェコ、バロテッリと得点トップ10に3人がランクする攻撃陣は圧倒的。あとは守備の充実が課題

今季のノルマはCLよりもプレミアリーグの制圧だ。

 攻撃力と引き換えに、守備陣にも相当な運動量が要求される“ハイ・エナジー”なマンCの新スタイルを考慮すれば、CLでのグループステージ敗退も、決して最悪のシナリオではない。もちろん、初出場にして欧州制覇の偉業となれば、サッカーを通じて母国の知名度を高めたいアブダビ系オーナーにとっては、最高のシナリオだった。

 しかし、昨季のFAカップ優勝が35年ぶりのタイトル獲得だったクラブにすれば、ステップアップの証としての今季のノルマは、CL優勝ではなく、プレミアリーグ優勝のはず。とすれば、3、4頭立てのタイトルレースが激化すると思われるシーズン終盤に、フィジカルとメンタルの両面で消耗するCL戦がない状況は、むしろ好都合だ。代わりに32強から参戦することになったヨーロッパリーグは、CL優勝候補にも匹敵するマンCの選手層を以ってすれば、「二足のわらじ」に苦労するレベルの大会ではない。

 チームの士気が低下する恐れもないだろう。マンCの敗退は、いわゆる「死の組」で、他グループであれば勝ち抜けを意味する10ポイントを獲得しながらの惜敗だった。ファンの反応も、バイエルン・ミュンヘンとのグループ最終戦には勝利(2-0)しての幕切れに、淡々としていた。左足一閃でバイエルンから先制点を奪ったダビド・シルバは、今更ながらに、キーマンとしての評価を高めてさえいる。

先発10試合10得点のバロテッリの活躍は「予想以上」。

 マンCのサポーターたちは、直後にアウェイで行われたチェルシーとのプレミアリーグ第15節(1-2)で、敵軍のプレーメイカーであるフアン・マタを、「お前はダビド・シルバの劣化版だ」と歌ってけなし、間接的に自軍のプレーメイカーを讃えた。チームも、結果的には今季のリーグ戦で初黒星を喫したものの、CL敗退のショックを感じさせる内容ではなかった。

 前半25分間は完全に敵を圧倒。シルバが倒された明らかなファウルがPKになっていれば、15分足らずで2対0として勝負がついていただろう。わずか2分で、マリオ・バロテッリがGKをかわして流し込んだ先制ゴールからは、その時点で先発10試合10得点というCFの自信が覗えた。

 バロテッリの信頼度急上昇は、チームの得点数激増と並ぶ今季の「予想以上」だ。ピッチ外でのトラブルは相変わらずだが、チェルシー戦では、試合前々夜の「門限破り」の罪を、チーム唯一の得点で償った。試合3日前の練習でリチャーズとの喧嘩騒動を起こしたアーセナル戦では、決勝点をお膳立てしている。

【次ページ】 判断力には光るものがあるが、発展途上の一面も。

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