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国際化の第一歩で揺れた今季のNPB。
投打における統一球対策の結論は? 

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田口元義

田口元義Genki Taguchi

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photograph byHideki Sugiyama

posted2011/12/15 10:30

国際化の第一歩で揺れた今季のNPB。投打における統一球対策の結論は?<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

今オフには1億円増の年俸2億2千万円(推定)で一発サインの契約更改となった内海哲也。統一球の特性をよく活かした投球内容で18勝し、見事最多勝のタイトルを獲得した

統一球で本塁打を量産するコツは「意識しないこと」!?

 3割打者が減ったことや今江、鳥谷の言葉からも、中距離打者が苦しんだことは理解できる。しかし、阪神を象徴するように、統一球の導入により大きな打撃を受けたのは、やはり長距離打者だったと言えるだろう。

 昨年、両リーグ合わせて20人が記録した20本塁打も、今年はたったの8人。総本塁打に至っては666本も減る結果となった。

 28本から11本と大幅に本塁打数を減らした元楽天の山崎武司は、自身の印象を踏まえて飛ばないボールの影響をこう分析した。

「長距離ヒッターっていうのは、ある程度、力だけでホームランを打てるもんなんですよ。でも、今年はそれだけじゃスタンドまで届かない。だから、飛ばないことはあまり意識せずに、とは心掛けていましたけどね」

 48本塁打を記録し、選手で唯一、統一球の影響を受けなかったと言われている西武の中村剛也も、結果を出せた要因について「意識はしないことです」と答えている。つまり、山崎の見識はひとつの答えとして説得力はある、ということになる。

巨人・阿部が考える「長打を意識しない」ことの意味。

 ただ、抽象的なイメージは拭えない。その「意識」について、より掘り下げた見解を述べてくれたのが、巨人の阿部慎之助だった。

「みなさんが言うように、ちゃんとバットの芯でボールを捉えないとホームランは出ませんから、ごまかしがきかなくなった印象は受けますよね。なので、僕の場合は長打に対する意識を減らしました。その分、ミートすることを強く心掛けて。そうすれば、ホームランも少なからず出てくれるだろう、と」

 阿部は今年、24本減の20本塁打に終わったが、114試合の出場を考えれば上々の数字といえる。打率にしても、昨年を上回っていることを加味すれば、彼の導き出した答えは、「飛ばない」イメージを覆す重要な対応策と言ってもいいだろう。

統一球による球界変革は、まだまだこれからだ。

 投手にとって有利に働き、打者にとっては不利な結果に終わった統一球元年。劇的な数字の変化からも、確かに「野球が変わった」と認識されてもおかしくはない。

 だが、今年はあくまで野球の変革期の一里塚であって、完全に変わったわけではない。

 各打者が対策を練り、研究を重ねた来年は、また違った結果になるはず。統一球導入の影響を説き、「野球が変わった」と断定するのは、それからでも遅くはない。

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