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沈みゆく格闘技界を救うふたりの女神、
RENAと神村エリカが紡ぐ新たな物語。 

text by

橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph bySusumu Nagao

posted2011/12/05 10:30

沈みゆく格闘技界を救うふたりの女神、RENAと神村エリカが紡ぐ新たな物語。<Number Web> photograph by Susumu Nagao

11月23日、東京ドームシティホールで開催された初代RISE QUEEN決定戦。距離感が掴めず、思ったように攻撃ができない神村エリカ(写真左)に対し、RENAはステップを使い、上手く踏み込みパンチを浴びせ続けた。試合は判定3-0でRENAの勝利。初代立ち技女王に輝いた

リングの明暗を分けた、両者の精神状態。

 神村圧倒的有利という下馬評の中で迎えた11月23日。リング上の明暗を決めたのは実力差ではなく、それぞれの“立ち位置”からくる精神状態だった。

 神村にとって、RISEは所属ジム・TARGETの伊藤隆会長が主宰するホームリング。その初代女子王座を他人に譲るわけにはいかなかった。倒して勝つ、圧倒的な強さを見せつけるという意識ゆえか、力みが目立った。対するRENAは文字通りの挑戦者。勝つことがすべてだ。

 神村が鮮やかに勝とうとすればするほど、下馬評とは裏腹にRENAの精神的優位が際立っていく。全5ラウンドの攻防で、クリンチにより神村に減点2、RENAに減点1が課せられた。挑戦者でありアウェーのRENAには“試合を壊す”余裕があったと言ってもいい。

 ベルトを巻いたのはRENAだった。判定は3-0。ジャッジ2者が1ポイント差だったから、減点ひとつ分、RENAが優ったことになる。

「追う者と追われる者では気持ちが違う」(RENA)

 RENAは、神村戦に向けて地元の大阪を離れ、シュートボクシングの本部ジムである浅草のシーザージムで長期の出稽古を敢行していた。ウィークリーマンションに泊まり込み、朝の掃除から始まる内弟子同様の生活。以前は「家に帰ったら格闘技のことは忘れます。切り替えが大事なので」と言っていたRENAだったが、この時ばかりは「24時間、格闘技のこと、神村選手のことしか考えなかった」。女子格闘技のトップランナーとしてのプライドは、完全に捨て去っていた。

「私のほうが勝ちたいという気持ちが強かった。勝ち続けていると、どうしても“今回も勝てるだろう”となってしまう。追う者と追われる者では気持ちが違うんです。私は、その両方を知ってるから」

 試合後、勝負のアヤをこれ以上ないほど的確に表現してみせたRENAは、こう付け加えてもいる。

「ここで神村選手が勝ったら、女子格闘技が(神村の独走で)終わっちゃうじゃないですか。それじゃあつまらない」

【次ページ】 ふたりの戦いは格闘技界再生の起爆剤となるか?

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RENA
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