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クラブ史上最も重要なCLで敗退。
レアルとバルサを分けたものは? 

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中嶋亨

中嶋亨Toru Nakajima

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photograph byMutsu Kawamori

posted2010/03/29 10:30

クラブ史上最も重要なCLで敗退。レアルとバルサを分けたものは?<Number Web> photograph by Mutsu Kawamori

レアル・マドリーのホーム、サンチャアゴ・ベルナベウで行われた対リヨン2戦目。前半6分、FWクリスティアーノ・ロナウドが先制するも、後半30分にはMFミラレム・ピアニッチにゴールを許しドローで試合終了。2試合の合計スコアで1-2となり、レアル・マドリーはCL敗退となった

 リヨンに敗れてCLを去ったレアル・マドリー。本拠地開催の決勝進出を逃す大失態に、当然ながらフロント、監督、選手への非難が殺到した。この敗退によってクローズアップされたのは、レアルがCLベスト16を突破できなくなったここ6シーズンのフロントたちの罪。先制に成功し、止めを刺すチャンスを幾度も作りながら、それを逸した焦りから試合のコントロールを失ったリヨン戦は、今のレアルにCLを勝ち抜く“チームとしての地力”が無いことを暴いた試合となった。

 シャビ・アロンソとマルセロが累積警告によって出場できなかったハンデも、言い訳になるどころか、レアルがいかに個人技に頼っているのかを明らかにするだけだった。ちなみに、初戦を引き分けで折り返したバルセロナは、ホームでの2戦目にチームの要であるシャビを負傷で欠きながらもきっちりと勝利し、次ラウンドへと駒を進めている。

腰を据えて基礎を作ったバルサと、壊し続けたレアル。

 レアルが敗退してから地元メディアは、'03-'04シーズンから現在に至るまでのレアルとバルサの監督の人数に注目した。バルセロナの監督はライカールトとグアルディオラの2人だけであるのに対し、レアルはケイロス、カマーチョ、ガルシア・レモン、ルシェンブルゴ、ロペス・カロ、カペッロ、シュスター、ファンデ・ラモスと現在のペジェグリーニに至るまで、実に9人の監督が入れ替わっている。これは、'03-'04シーズン以後バルセロナが2人の監督によって現在に通じるチームの基盤を築いたのに対し、レアルは7シーズンで9人も監督を入れ替え、その度にチームを新しく作り直してきたことを示している。

 興味深いのは'05-'06シーズンにCLを制したバルセロナの、そこへ至るまでの紆余曲折だ。当時のバルセロナは、クライフが去ってからライカールトがやって来るまでの7シーズンで、5人もの監督を入れ替えていたのだ。そして、この期間のバルサは、CL優勝はおろか予選リーグで敗退するシーズンもあるほど不安定な戦いを続けていたのだ。

 ここから明らかになってくるのは、どんな監督も半シーズンや1シーズンだけでは1発勝負のCLを勝ち抜く地力をチームに備えさせることはできないということだ。レアル、バルサ共に、監督の入れ替えが続いた間でもリーガでのタイトルだけは獲得している。これは長丁場のリーガならば巻き返しが可能なのに対し、欧州の強豪相手に行う一発勝負の戦場ではそれ以上の力が必要であるという当たり前の事実を示している。

 こうやってふたつのクラブの近年の流れを比較してみると、決勝がホームで開催されるというクラブ史上最も重要だったはずの今季のCLに向けて、レアルは明らかな準備ミスをしていたことが分かってくる。

【次ページ】 過去の苦い経験を糧にしてCLの頂点に立ったバルセロナ。

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