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野口啓代/ボルダリング 
世界一の“岩登りウーマン”は二十歳。 

text by

芦部聡

芦部聡Satoshi Ashibe

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photograph bySatoshi Ashibe

posted2010/03/26 06:00

野口啓代/ボルダリング 世界一の“岩登りウーマン”は二十歳。<Number Web> photograph by Satoshi Ashibe

オランダでのW杯優勝もあって'09年度にはW杯年間王者となった

赤い爪を光らせて天井からぶら下がる女の子。

<昼> おにぎり、ゼリー(カロリー0)、スポーツドリンク。

 ストレッチで体をほぐすと、両手に滑り止めのパウダーをまぶし、壁面に飛びついた。わずかな窪みにラメが光る赤い指先をひっかけ、するりとトラバースしていく。天井から蜘蛛のようにぶら下がると、両足を交差させ次なる足場を求める。重力に逆らう複雑怪奇な体勢はツイスターゲームでも要求されまい。

「最初はぜんぜん歯が立たなかった。ちょっと進んでは落っこちて、また上る。何度も何度も繰り返して、ようやくクリアできるようになったけど、今でも相当きつい(笑)」

 1ルートの手順は100~150程度。所要時間は10分ほどだが、体力の消耗は激しい。息を整えては、おにぎりやゼリーを少しずつ頬張り、ふたたび壁面の課題に取り組む。

パワーの源は1日1リットルの搾りたての牛乳にあり。

<晩> 野菜スープ、イチゴ、リンゴ酢、牛乳。「一時期、練習中に食べるのはお菓子だけという時期もあった」そうだが、アスリートの食生活に相応しくないと反省。「最近は体の柔軟性を高めてくれると聞いたので、リンゴ酢をお水で割って飲んでます」

「腹筋、腕立て伏せやジョギングもやりますけど、実際にボルダリングするのがいちばんのトレーニングになるんです。街中のジムに行くと8時間ぐらい練習するけど、一般のお客さんも大勢いらっしゃる。待ち時間がけっこうあるので、ついついおやつを食べ過ぎちゃうんですよね(笑)。自宅では集中して練習できますが、そのぶんハード。ルートを6本こなすのが限界ですね」

 締めくくりにホルダーに指先を引っかけての懸垂を10回ほどこなし、2時間ほどで練習を切り上げた。165cm、48kgの華奢ともいえる野口さんのどこに、これほどのパワーが秘められているのか。しかも、ちょっとしか食べないのに。腑に落ちない思いである。

「夜は炭水化物は控えめにしてますけど、毎晩就寝前に牛乳を飲みますね。ミルクはこどものころから大好きで、1日1リットルぐらい飲んでます。なんせ家業が酪農なので、搾りたてが飲み放題ですからね(笑)」

野口啓代 (のぐち あきよ)
1989年5月30日茨城県生まれ。小学校5年生からフリークライミングを始め、6年生の春休みには全日本ユース選手権で優勝し、天才少女の出現と話題になった。ボルダリングW杯フランス大会優勝、世界ユース選手権優勝、クライミングW杯オーバーオール部門年間チャンピオン、世界選手権・個人総合優勝など、世界のトップ選手として活躍中

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野口啓代

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