世界の青木は「パターうまくなったな」と松山を祝福。

　松山がきちんと見える位置でベタピンのバンカーショットを披露してくれるようなサービス精神。そして何よりもパターを含めた青木のショートゲームに魅了された1日が松山のプロ原体験だったのである。

「最初にプロの生のプレーを見たのが青木さんだった。いろんな技術を見せてもらった。見よう見まねでやっても全然できなかったですけど」

　優勝した翌週、ダンロップフェニックスの会場で青木から「パターうまくなったな」と祝福されたのは、これ以上ない褒め言葉だったはずだ。同じくダンロップフェニックスに出場していたジャンボ尾崎も「久しぶりに日本人の大型プレーヤーが出てきたな。最近は韓国に押されてるからいいことだ」と松山に期待している様子だった。

「I」と「M」のライバル物語はまだ序章にすぎない……。

　ただし、青木はこうも言っている。

「プロのゴルファーは金と名誉のためにプレーしている。アマチュアの松山はどんなに悪くたってゼロでしかない。だから勝ち負けのプレッシャーを感じずにプレーできる。その結果がこないだの優勝につながった。勝つことでプロのプレッシャーを感じてきてるのが今の遼。松山もそれはプロ宣言してからでないと感じられないことだよ」

　ならば、真のライバル関係は松山がプロになった後でないと始まらないのかもしれない。

　とはいえ、2人のゲームはプロ、アマ関係なく日々進化を続けていく。石川はドライバー一辺倒から脱却し、アイアンからアプローチ、パターまで取り組みの幅を広げているし、松山も1m80cm、85kgとむくむく成長する体を生かして飛距離アップを目下の課題としている。

　ドライバーからショートゲームへ、ショートゲームからドライバーへ。異なる出発点から異なるルートを辿りつつも、2人のゴルフはいま同一線上に重なりつつある。

「AO」の血脈を受け継いだ「I」と「M」のライバル関係。願わくば青木や尾崎ですらたどり着けなかった地平まで、その軌跡を伸ばしていってほしいものである。