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福西崇史が語るタジク、北朝鮮2連戦。
“消化試合”でも絶対に譲れないこと。 

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二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2011/11/14 12:10

福西崇史が語るタジク、北朝鮮2連戦。“消化試合”でも絶対に譲れないこと。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

合宿先ドーハでの気温は34度。タジキスタンは0度。ところどころ土がむき出しになったピッチを試合前に見たザックジャパンの選手からは、「高校時代は予想外のはね方をする中でやっていたけど最近は(土のグラウンドでは試合を)やってないからなぁ」(岡崎慎司)という不安げなコメントも聞かれた

 ブラジルW杯アジア地区3次予選最大のヤマ場となったタジキスタン戦、北朝鮮戦の“アウェー&アウェー”。日本代表はその一発目となるタジキスタンとの戦いで、土がむきだしとなった不良ピッチのなかでも前半途中からパスワークで圧倒するようになり、結果的には4得点を叩き出して快勝。次の北朝鮮戦を待たずして、3次予選突破を決めてしまった。

 アウェーの厳しい環境をはねのけ、このタジキスタン戦を通じて見えてきた彼らの成長の跡とは――。日本代表としてアジアでのアウェー戦を何度も経験してきたサッカー解説者の福西崇史氏にタジキスタン戦の評価と、15日に控える北朝鮮戦のポイントを聞いた。

元日本代表でアウェーの戦い方を熟知する福西氏が注目した点。

 試合当日まで積雪の処理に追われたドゥシャンベセントラルスタジアムのピッチ状態は極めて悪く、非常に滑りやすくなっていた。

 不慣れな日本は序盤、トラップやキックに苦しんだ。加えて相手のタジキスタンも自陣に閉じこもった1カ月前の試合とは打って変わって、前からプレスをかけて攻撃にも人数をかけてきた。ハーフナー・マイクの高さを活かそうとした日本だったが、「想定外」に近い状況に最初は面食らっていたようにも見えた。だが、冷静に軌道修正を図っていくことで打開に成功するわけである。福西氏はこの日本の「対応力」を高く評価する。

「空中戦を頭に入れたうえで高さのあるハーフナーには多少、ルーズというか大雑把なパスを出しても大丈夫という思いがチームにはあったはず。だけどパスの出し手のところであそこまで軸足が滑ってしまっては、ある程度いいボールを送るのも難しい。タジキスタンはハーフナーからこぼれたボールを2列目に拾われないようにと、スペースも埋めていました。

 でも日本はさほど慌てなかった。比較的ボールを回せるんじゃないかという共通認識があったのか、単純にボールを入れて奪われるリスクを避けて、足元でつないでいくことを選んだ。長谷部、遠藤のところでフリーになっていたため、そこからチャンスをつくっていこうとしたのです。ピッチの状況や相手の出方を見ながら修正して戦えたことが4ゴールという結果につながっていったのではないか」

全員の冷静な意思統一ができていたからこそ生まれた先制ゴール。

 日本がゴールに迫ってくれば速やかにブロックをつくって中を固めるタジキスタンに対し、日本はサイドで揺さぶってから縦の裏をつこうとする。

 その狙いが当たり、前半36分の先制ゴールも「揺さぶりから裏」で生まれたものだった。

「左サイドの香川がドリブルでマイナスに動いて相手を引き寄せておいてフリーの長谷部にパスを出し、中村が最終ラインのギャップを突いて裏に出た。インターセプトして攻撃に参加していた今野がゴールを決めるわけですが、全員の意思統一があればこそのゴールシーンでした」

【次ページ】 中村憲剛ら2列目の距離感と連動したプレーを高く評価。

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