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西武の粘りを引き出した、
監督と西口文也の信頼感。
~劇的なCS進出を振り返る~ 

text by

永谷脩

永谷脩Osamu Nagatani

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2011/11/24 06:01

シーズンは68勝67敗に終わったが、若手とベテランのバランスが取れたチームに仕上がった

シーズンは68勝67敗に終わったが、若手とベテランのバランスが取れたチームに仕上がった

 10月1日、西武ドームでかつての盟友、ソフトバンク秋山幸二監督が空高く胴上げされたとき、西武の渡辺久信監督は、選手全員を集め、今シーズン最初で最後の檄を飛ばした。

「昨年の悔しさを晴らすためにも、残りの試合は俺に体を預けてくれ。責任はすべて俺が取る」

 17年目の39歳、生え抜きのベテラン西口文也は「監督の本気度が伝わってきた」と振り返る。この時点で西武の残り試合は13試合、3位オリックスとの差は4ゲーム。ここからの追い上げはすさまじかった。そして1ゲーム差まで詰め寄って迎えたシーズン最終戦。この日、オリックスが負けて西武が勝てばクライマックスシリーズ進出という土壇場を任されたのは、その西口だった。

「このまま引き下がりたくはなかった」というベテランは、日本ハムを相手に8回まで140球、11三振を奪う力投を見せ、価千金の勝利を見事にたぐり寄せた。昨年はたったの3勝、年俸も1億2000万円から半額にダウンした男が挙げた6年振りの二桁勝利。“ここ一番に頼りにならないオツ”と言われ続け、ポストシーズンでは1勝も挙げていない男の意地だった。

「一度死んだ人間は開き直れるから強いよ」(渡辺監督)。

「監督が自分たちを信頼して、我慢してくれているのを肌で感じていた」と西口は言う。執念の勝利から34分後、オリックスが敗れ、西武が劇的なCS進出を果たした。その差はたったの1毛。前半戦に9連敗もあり、最大借金15からの逆襲だった。

「一度死んだ人間は開き直れるから強いよ」と渡辺がニヤリと笑った通り、CSファーストステージでも、粘り強さを発揮してシーズン2位の日本ハムを撃破した。ファイナルステージ進出を決めた2戦目に先発した西口は「監督に任されている」という誇りを持って、8回途中104球1失点の粘投で、ポストシーズン初勝利を挙げた。

 今春の南郷キャンプで、「信頼と放任は紙一重で難しい」と西口が話していたことがある。“監督の信頼”を肌で感じさせたのが、ソフトバンク優勝の夜の檄だった。“短期決戦はベテラン頼み”と言われるが、西武をファイナルステージ進出へと引き上げたのは、ベテランの気持ちを知り尽くす渡辺監督の寛容力だった。

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