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楽天ファンに愛された
山崎武司が進む信念の道。
~現役続行にこだわる理由~ 

text by

永谷脩

永谷脩Osamu Nagatani

PROFILE

photograph byHideki Sugiyama

posted2011/10/30 08:00

ファンを大切にしていた山崎。「近いうちに優勝してほしい」と言い残しチームを去った

ファンを大切にしていた山崎。「近いうちに優勝してほしい」と言い残しチームを去った

 秋風が吹くころ、優勝争いから脱落したチームで行なわれるのが、戦力外通告だ。今年も阪神の下柳剛、オリックスの田口壮と40歳を越えたベテランの名があがった。そして楽天の山崎武司もその一人に加わった。山崎はあえて任意引退を選ばず、本塁打王のプライドを捨てて、現役続行できるチームを探すのだという。

 毎年キャンプの時期、山崎は「結果が残せなければ引退するしかない」と語るのが口癖だった。そう言いながらも「まだやれるよ」という相手の反応を待っているのが伝わってきた。「辞めたくない」という気持ちをエネルギーに変えている男だった。

 今季の楽天の星野仙一、田淵幸一体制は、体育会系気質が強い首脳陣だ。星野体制には、これまで島野育夫という“気配りの名参謀”がいたからこそ、監督と選手の関係が融和されていた。彼が存命だったならば、山崎の動きも変わっていたかもしれない。

指導者の道を捨て、現役続行を決意させた息子の言葉。

 楽天は、仙台を愛するチーム創設からの生え抜きを失った。本拠地での最後の試合、ネット裏に陣取る初老の婦人が語ったことを思い出す。「山崎選手は仏頂面をしているけれど、飾り気のない本当は優しい人なのよ。出身は違うけど、体裁を取り繕わない東北人そのものよ」

 常日頃から「かっこいい親父でありたい」と口にする男は、仙台でオールスターが行なわれた'07年、息子を球場に呼んでホームランを打った。“ユニフォームを着ていてほしい”と願う息子の言葉に、楽天からオファーされた指導者の道を捨て、現役にこだわった。

 このオフは険しい道が待っているだろうが、「中日を出て、オリックスに移った時から、きれいな終わりはないと思っている」と語っていた山崎。獲得の可能性があるとすれば、報道されている通り勝利至上主義を捨て、地元への温かいチーム作りを目指す、ドラゴンズだろうか。

 楽天とすれば、2割3分に満たない打率、チーム最高といっても11本の本塁打で2億5000万円の年俸という費用対効果を考えて戦力外にしたのだろうが、球場に足を運ぶ観客たちは彼の生きざまに魅かれていた。野武士のような兄貴分がまた一人、仙台から消え、“いい子”ばかりになっていく。

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