スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
名将とブルペン。
~ワールドシリーズ勝敗の鍵は?~
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2011/10/20 06:01
ワールドシリーズ初制覇を狙うレンジャーズのロン・ワシントン監督(左)と3度目の戴冠を窺うカーディナルスのトニー・ラルーサ監督
名将ラルーサの相場勘に一票を投じたいのだが……。
カーディナルスのほうも、サラス、ドテル、ゼプチンスキー(スペルがめちゃくちゃにややこしい)といった中継ぎが好調だ。抑えのモッテは5年前までマイナーリーグの捕手をつとめていたが、いつの間にかチームに欠かせないクローザーになった。
とまあそんなわけで、両球団の戦力はまず互角と見てよい。
だとすれば、勝敗の帰趨はどちらの先発投手陣が先に息を吹き返すかにかかってくる。だが、どうだろうか。ここ11試合の流れを見るかぎり、先発崩壊→救援好投の傾向が急に変化するとは思えない。復活するとすれば、潜在能力の高いカーペンター(カーディナルス)だろうが、ウィルソン、ルイス、ホランドといったレンジャーズ先発陣は、不安定なまま今季を終えるような気がしてならない。
そうなると、最後の鍵は監督の采配に左右されそうだ。
ラルーサ対ワシントン。実績でも知名度でもラルーサが上だが、もうひとつ注目すべきは彼の「継投能力」だ。
NLCS6試合で、ラルーサは投手を28回交代させた('96年のNLCSでは7試合で27回交代させている)。これは「貧乏暇なし」と呼ぶよりも、「勝負師特有の素早い判断」と呼ぶほうがふさわしいだろう。好漢ワシントンにシリーズ初制覇をプレゼントしたい気持もなくはないが、私はやはり名将ラルーサの相場勘に一票を投じたい。しかし、それにしても、最後の最後で「投手の年」はどこへ行ってしまったのだろうか。