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ヤクルト失速で混迷する優勝争い。
「8回」を凌ぐチームが乱セを制す!? 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph byHideki Sugiyama

posted2011/09/03 08:01

ヤクルト失速で混迷する優勝争い。「8回」を凌ぐチームが乱セを制す!?<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

巨人の復調をセットアッパーとして支える山口鉄也。一昨年は最優秀中継ぎ投手のタイトルを獲得した山口だが、昨年から先発転向も模索されていた

セ・リーグ大混戦の理由は「8回の失点」に隠されている。

 セ・リーグの8月は横浜を除く5チームが5ゲーム差以内にひしめいて終わった。中でもヤクルト、巨人、阪神、中日の4チームは8月25日からのほぼ1週間で一気に、その差が縮まり、混戦状態へと突入した。

 その間の4チームの8回の失点は以下の通りだった。

 ヤクルトはこの間に5連敗して、8回の失点は1、1、0、0、3点と3試合で5失点している。

 逆に中日は5試合で8回に失点したのは30日の阪神戦だけで、この試合だけが黒星の4勝1敗。巨人も6試合を戦って、25日の阪神戦と28日の広島戦の各1失点で、逆に3試合で計4得点をマークして4勝1敗1分という数字を残した。阪神もその間の5試合で敗れたのは31日の中日戦だけだ。その他は26日のヤクルト戦で8対2という大量差の勝利時に2点を失っただけだった。

セットアッパーの好不調が各チームの明暗を分けた。

 前半戦のヤクルトの快進撃の影には、やはりトニー・バーネット、押本健彦両投手を中心に久古健太郎投手、松岡健一投手がセットアッパーとして機能。勝ちゲームを確実にものにして、負けていたゲームも8回を凌ぐことで勝ち試合や引き分けに持ち込めたことが大きかった。

 逆に阪神は藤川球児投手につなぐセットアッパーとして獲得した小林宏投手の不振から、8回に追いつかれ、逆転されるケースが目立ち、それがもたつきの原因となっている。

 一方の巨人は日替わりクローザーが続いたことで、必然的にセットアッパーも固定できない試合が続いた。しかし、8月に入ってそれまで中継ぎの多かった久保裕也投手をクローザーに固定、山口鉄也投手を8回に起用する基本的なパターンが出来上がると、月間17勝8敗と勝率は6割にアップ。一気に借金を返済して、勝ち越した。

 この中でちょっと違うパターンだったのは中日だ。このチームは浅尾拓也投手がセットアッパーにクローザーにときちっと機能。一応、8回の失点も32失点と巨人に次ぐリーグ2番目の少なさだった。しかしこの浅尾が、負け試合の8回に登板するケースが13試合もあったのが今年のチーム状態の悪さだった。ここからは接戦に持ち込むが打線の得点力が低くいいセットアッパー(クローザー)を生かし切れない展開が読み取れる。

【次ページ】 阪神は小林宏を見切って榎田に8回を任せられるか?

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山口鉄也
読売ジャイアンツ
アトランタ・ブレーブス
ジョニー・ベンタース
クレイグ・キンブレル
浅尾拓也
中日ドラゴンズ
小林宏
榎田大樹
阪神タイガース

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