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強豪校が甲子園の魔物に
呑み込まれた理由とは。
~日大三と帝京、横浜の差~ 

text by

小関順二

小関順二Junji Koseki

PROFILE

photograph byHideki Sugiyama

posted2011/09/03 08:00

横浜は完全な勝ち試合だったが、9回に救援した投手陣が智弁学園打線に集中打を浴びた

横浜は完全な勝ち試合だったが、9回に救援した投手陣が智弁学園打線に集中打を浴びた

 甲子園には魔物が棲んでいると言われるが、今年の夏ほどそれを痛感させられたことはない。2、3回戦で強豪校が終盤にビッグイニングを作られ、大苦戦ないしは逆転負けを喫したのだ。

 8月13日の2回戦第2試合では、春・夏3回優勝している帝京が、9回1死まで3対0とリードしながら八幡商の遠藤和哉に逆転満塁ホームランを打たれ、まさかの逆転負けで甲子園を去った。

 3回戦に突入した15日には、春・夏優勝5回を数える横浜が、8回まで4対1と智弁学園をリードしながら9回に打者13人による猛攻を許し、一挙8点を奪われて高校野球史に残る大逆転負けをした。

 帝京の敗因はエース伊藤拓郎の不調や、4番・ショートの松本剛が9回に犯した痛恨のエラー。横浜は9回にヒットを1本打たれただけでエース・柳裕也を降板させた渡辺元智監督の投手起用が、直接的な敗因として挙げられたが、それらは致命的なファクターではない。

リードしていても、相手を積極的に揺さぶった日大三と智弁和歌山。

 最も責められなければいけないのは、ともに3点リードしていた6、7、8回の淡泊な攻撃にある。

 この3イニングで出塁したのは、帝京が二塁エラーの1人、横浜が二塁打と四球の2人だけ。三者凡退のイニングがともに2回もあった。

 2校同様、中盤から終盤にビッグイニングを許し、崖っぷちまで追い詰められたのが2回戦の智弁和歌山と日大三だ。

 智弁和歌山は7回、白樺学園の小林航に同点となる満塁ホームランを打たれ、日大三は5、6回に開星の集中打を浴び、一時は5対6と逆転を許した。

 しかし、2校はリードしているときでも攻めの姿勢を忘れていなかった。

 智弁和歌山は2点リードした6回、無死一塁からバント安打、バントと小技を繰り出して1死二、三塁の局面を作り、3番・山本隆大が2点タイムリーを放った。日大三は得点こそなかったが、5点リードの4回、エラーで出塁した1番打者を2番打者がバントで送り得点圏に進めるなど、得点への意欲を切らさなかった。

 リードしているときに、相手の気力を萎えさせるような積極的な揺さぶりが、日大三と智弁和歌山には見られ、帝京と横浜には見られなかった。この小さな差異が、結果に大きな差をもたらしたと言えるのではないか。

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