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公務員ランナー川内優輝、
異色の練習で世界に挑む。
~9月4日、世界陸上男子マラソンへ~ 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

PROFILE

photograph byShiro Miyake

posted2011/09/01 06:01

定時制高事務職員の川内。無類のコーヒー好きだが、昨年末から願掛けのため控えている

定時制高事務職員の川内。無類のコーヒー好きだが、昨年末から願掛けのため控えている

 陸上の世界選手権が先月27日に韓国・テグで始まったが、後半戦も楽しみな種目は多い。9月1、3日には、村上幸史が出場するやり投げ、最終日の4日には男子・女子の4×100mリレーが実施される。

 同じく4日には男子マラソンも行なわれるが、日本代表5人の中でも川内優輝の走りに注目が集まる。

 川内は、今年2月の東京マラソンで2時間8分37秒で日本選手最上位の3位となり、世界選手権代表入りを果たした。なによりも話題にのぼったのは、川内が埼玉県職員としてフルタイムで働きながら練習する、いわゆる「市民ランナー」であったことだ。それにもかかわらず、代表となったことが、驚きをもって受け止められた。

 だが、川内に注目すべき点は、市民ランナーというあり方ばかりではない。

高速化が進むマラソン界に川内が示した対照的なアプローチ。

 実業団のマラソン選手の場合、現在、主流となっているのは、トラックでスピードをつけてからマラソンに挑戦する方法である。スピードがなければ、高速化を続ける世界に太刀打ちできないという考えからだ。

 川内はそれと対照的である。仕事がある関係で決して練習時間は長くはないが、彼の考え方の根本にあるのは、「距離を走ることでマラソンに挑戦する」ということ。東京マラソンの前にも可能な限り長い距離を走って大会に臨んでいた。

 日本の男子マラソン界の常識から外れたアプローチにもかかわらず、日本勢5人の中でトップの持ちタイムで代表入りした。その事実は、日本の陸上界に一石を投じるものであったのだ。

 川内は世界選手権に向けて、記録会やハーフマラソンなどに意欲的に出場し、調整してきた。「実戦を重ねることで強化を図る」目的からだ。そこにも、川内特有の取り組みが感じられる。

 川内は言う。

「実業団とは違うやり方もあることを分かってもらえるように、結果を残したいと思っています」

 男子は、世界のトップクラスとの距離が開きつつある中で、異色のマラソン選手、川内がどのような走りを世界選手権で見せることができるのか。

 日本の男子マラソンの今後にとっても、興味深いレースとなる。

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