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移籍か、残留かで揺れた
福留、上原、黒田の決断。
~シーズン中トレードを巡って~ 

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四竈衛

四竈衛Mamoru Shikama

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photograph byGetty Images

posted2011/08/18 06:00

移籍か、残留かで揺れた福留、上原、黒田の決断。~シーズン中トレードを巡って~<Number Web> photograph by Getty Images

中日、カブス時代と同様、背番号1を用意された福留。早くも6番右翼に定着しつつある

 少しだけ着心地の違うインディアンスのユニフォームに袖を通した福留孝介は、いつものように淡々とした口調ながら、明瞭な言葉でこう言った。

「いい場所を与えてもらっていますし、僕自身、やりがいはあります」。7月31日のトレード期限を前に、福留は拒否権を持つ15球団の中に入っていたインディアンスからの獲得オファーを受け入れ、古巣カブスを離れる意思を固めた。

 大リーグの7月は、実に慌ただしい。プレーオフを目指す上位球団と、来季の再建へ向かうチームのいずれもが、ターニングポイントとしての決断を迫られる。「買い手」となるか、「売り手」となるか。開幕以来、優勝争いから脱落したカブスで契約最終年を迎えた福留にとって、緊張感が薄れ始めたチーム状況でこれ以上プレーを続けることは、野球選手としてプラス材料を探すのも困難だった。

 低迷オリオールズで好投を続けていた上原浩治も、移籍は覚悟していた。上位球団に一方的に敗れた試合後、一向に士気の上がらない空気に、「何を目指していいのか……」とこぼすこともあった。その一方で、レンジャースへのトレードを通告された際には、古巣への愛着と、同僚との別れの寂しさから涙を浮かべた。ビジネスライクな米球界では日常的でも、そう簡単には気持ちを切り替えられないのが、シーズン中のトレードでもある。

ドジャース黒田博樹は、悩み抜いた末に残留を決めた。

 実際、'02年には、マリナーズのユージン・キングセールが、遠征先・サンディエゴの球場到着後に対戦相手のパドレスへの移籍を通告され、そのままパドレスの選手として試合に出場したケースもある。'04年のトレード期限日には、当時マリナーズのフレディ・ガルシアのホワイトソックス移籍が、試合中に電光掲示板で発表され、ガルシアは泣きながら同僚と抱擁を交わした。それほど、メジャーの移籍はシビアで、容赦ない。

 全球団に拒否権を持つドジャース黒田博樹は、悩み抜いた末に、残留を決めた。

「確かにプレーオフのマウンドは魅力。でも、野球人生は毎年最後だと思ってやってきましたから」

 移籍か、残留か。その結論に到るまでの過程はそれぞれ異なるが、共通するのは必要とされる喜び。いずれの選択をしたとしても、プロとしての「生きがい」を探す旅が、ユニフォームを脱ぐまで終わることはない。

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