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早大野球部の“バント伝来”107年目。
高校野球で、その功罪を見きわめる。 

text by

小関順二

小関順二Junji Koseki

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photograph byHideki Sugiyama

posted2011/08/11 10:30

早大野球部の“バント伝来”107年目。高校野球で、その功罪を見きわめる。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

2010年夏の甲子園大会、優勝した興南の2番打者、慶田城開は随所にバントを決め、チャンスを広げる役割を果たした

日本球界を蝕む“高校時代のバント病”を一掃するには?

 国際大会に目を転じると、日本チームは得点力不足が慢性化している。バントはうまいが、塁上の掃除役がいないというのは、日本野球を語るときに避けて通れない話だ。

 この得点力不足に一役買っているのが“高校時代のバント病”である。チャンスの場面でバットを振ることによってバッティングは向上するのに、そのチャンスが与えられていない。

 極論は承知で言うが、バントに制限を加えられないだろうか。

 高校野球の試合で1試合平均5本のバントが行われているなら、「1試合、バントは5本」というルールを作る。ルールと言っても、春、夏の甲子園大会限定のローカルルールである。甲子園を発信源にすれば全国に波及する可能性がある。

「それなら簡単、今も5本ちょっとだし」と思うのは早計で、「バント5本」には空振り、ファールも含む。つまり失敗が許されない状況を作り上げる。

 私はバントを否定するものではない。

 バントに制限を加えることによってバントをする場面にスポットが当たり(重要な場面ということで)、バントの技術は当然上がり、チャンスでバットを振ることが多くなることによって打者の技術も上がる。一石三鳥の妙案だと思っているのだ。

「バント伝来107年目」の今夏、甲子園でバントはどういう役割を持たされて、どういう局面で行われていくのか。じっくり見させてもらうことにする。

【次ページ】 《資料》 2010年全国高校野球選手権大会のバント数

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