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“冬季五輪のマラソン”で偉業達成。
クロカン石田正子にもっと賞賛を! 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byKeisuke Koito/PHOTO KISHIMOTO

posted2010/03/01 00:00

“冬季五輪のマラソン”で偉業達成。クロカン石田正子にもっと賞賛を!<Number Web> photograph by Keisuke Koito/PHOTO KISHIMOTO

“冬季五輪のマラソン”で偉業達成。クロカン石田正子にもっと賞賛を!

 ゴールすると、両手を突き上げた。

「今やれることは、やりました。今日は満足です」

 弾んだ声で語る表情には笑顔が浮かんでいた。 

 2月27日、ひとつの快挙が生まれた。

 クロスカントリー女子30kmクラシカルで、石田正子が5位入賞を果たしたのである。

 雨の降る中、午前11時45分頃スタート。

 石田は最初の5kmでスキー板をかえ、7.1km地点では27位で通過。だが、焦らずペースを守り上位に進出する。20kmで再度板をかえ、 22.3km通過時点では9位。

 だが、ここからその持ち味を存分に発揮する。

 残り800mあたりだろうか。7位に上がっていた石田は、スパートをかけると、一人かわす。トラックに入り、さらに一人を抜き去る。もう少しあれば4位の選手も抜いていたかもしれない。終盤に強い粘り強さを見せて、5位でフィニッシュした。

日本は監督、コーチを含めて「7名しかいません」。

日本クロスカントリー史上、男女を通じて最高の成績である。

 ヘッドコーチの岡本英男氏も喜びを隠さない。

「日本のクロスカントリーの歴史を塗り替えました」

 では、今回の入賞が快挙である理由はどこにあるのか。

 それは日本と、北欧を中心とした海外の強豪国でのクロスカントリーの地位の差だ。長い歴史を誇るクロスカントリーは、海外では数あるスキーの種目の中でも注目が高く人気もある。その分、選手層も厚い上に活動資金面も豊かで、トレーニング環境も日本とは大きな違いが出てくる。だから日本は長い間、世界の厚い壁にはね返されてきた。

 代表のありかたも異なる。上位を争う選手のいる国では、数十名のスタッフをかかえていることも珍しくない。日本は監督、コーチを含め「7名しかいません」(岡本氏)。スタッフは各々、職務を掛け持ちし、選手のサポートにあたってきた。今ある条件の中で、やれることはすべてやり尽くした日本チームの勝利でもある。

つねに日本記録を塗り替え、世界に伍してきた石田。

 むろん、石田個人の頑張りは見逃せない。

「よくあそこまで追い込めたな、と思います」

 と岡本氏が言うように、石田は、誰よりも練習を積み重ね、技術も身につけてきた。

 それは成績にも反映している。

 初めて出場したオリンピックであるトリノでは、10kmクラシカルで31位。

 その後、07年の札幌の世界選手権30kmクラシカルで13位。昨シーズンのチェコ・リベレツでの世界選手権では10kmクラシカルで8位となり、ノルウェーのトロンハイムで行なわれたワールドカップの30kmクラシカルでついに3位。これらの成績も、その時点での日本最高記録であり、豊富な練習に裏打ちされた着実な歩みこそ、真骨頂である。

<次ページに続く>

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