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セレクトセールに見る、
日本のセリの世界標準化。
~成熟する競走馬市場~ 

text by

片山良三

片山良三Ryozo Katayama

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2011/08/14 08:00

セレクトセールに見る、日本のセリの世界標準化。~成熟する競走馬市場~<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

今年の最高価格3億6千万円は日本のセリ史上で1歳馬の最高額、当歳馬を含めても3位

 長い間当歳馬が取引の主役をつとめていた、日本の競走馬のセリ市場。貴重な超良血馬を手に入れるためには、スピードを第一として、ためらいなく大金を投じるという姿勢が必要不可欠とされていた。そのような風潮の中においては、1歳馬のセリというとそれ自体が売れ残りセールのように見られてしまう傾向があり、値段も当歳馬より1歳馬が安価なのが当たり前だった。

 しかしこれが世界のスタンダードかといえばそうではなく、欧米の競走馬の取引は1歳馬が圧倒的な主流。早く手に入れるということはそれだけ買い手の側にリスクが生じるため、彼らの常識では当歳馬が1歳馬より高値で流通する日本のセリのシステムは理解されにくかった。

 このままでは日本産の馬が世界のマーケットに進出しにくいということで、4、5年ほど前から社台グループが1歳馬市場に良血馬を温存する方策に転換した。これが流れを大きく変えたのだ。当初は買い手側に戸惑いが生じたが、年を経るごとに対応にも慣れてきた。それがいまの競走馬市場の姿だといえる。

買い手側の馬を選ぶ目が厳しくなっている一面も。

 4年連続で売り上げが下降線を描いていたセレクトセールにも変化の成果が目に見える形で現れて、今年は活況に沸いた。

 もちろん主流は初日の1歳馬市場で、過去最高の233頭の上場を集めて、落札数も197頭とこれも最高。ディープインパクトとエアグルーヴの間に生まれた牝馬が3億6千万円(税抜き)という1歳馬の国内最高価格を更新するなど、2日目に行なわれた当歳馬市場より高値で取引される馬が続出して主催者や生産者を大いに喜ばせた。

「震災で社会的にまだ回復していないうえ、競馬全体の売上も落ちているのにセリが盛り上がったのは本当にありがたいことです」と、主催の日本競走馬協会関係者は語る。今回の活況は、当事者たちからしても意外と感じるほどの成果だったことがわかる。

 買い手側の馬を選ぶ目が厳しくなっている一面も見えた。今年の1歳馬がラストクロップとなるアグネスタキオン産駒が、19頭の上場で6頭も主取りという結果に終わったことがその象徴だ。かつてのリーディングサイアーでも、個体のデキをシビアに評価されるというのは、別の意味でも市場が成熟してきていることが確認できたように思える。

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