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<なでしこインサイドレポート> 苦悩する2人のFW。 ~永里優季と安藤梢~ 

text by

ミムラユウスケ

ミムラユウスケYusuke Mimura

PROFILE

photograph bySatoru Kaneko

posted2011/08/11 06:00

己を信じ抜いたからこそ、彼女たちは世界一の称号を手に入れた。
だが、思いが強すぎるがゆえに、ピッチ上での明暗は分かれた――。
永里と安藤。ともにFWとしてプレーした二人の知られざる葛藤を描く。

 日本に土がついた唯一の試合は、FWがもっともボールに触れることの出来なかった試合だった。

 イングランドとの第3戦――。すでにグループリーグ突破を決めていた日本は、この試合に勝ち、決勝トーナメントの戦いに弾みをつけようとしていた。

 だが、思惑は外れた。パスが通らない。ルーズボールは奪われる。前線からの守備が機能しない。選手たちの動きも鈍かった。

 後半に持ち直したとはいえ、前後半に1点ずつとられて0-2の完敗。過去2戦の相手とのレベルの違いを痛感することになった。

 明らかになったのは守備の問題だった。前半を終えてベンチへ下がる途中、チームの中心であるMF宮間あやがFW永里優季を呼び止め、険しい表情で話しかけた。

「ボランチ(のパスコース)を完全に切って欲しい」

 ゴールを最優先に考えて、相手のボランチとセンターバックの間にポジションをとる永里に対しての要求だった。

永里は、宮間の要求を理解しつつも、「別のこと」を考えていた。

 守備の中でファーストディフェンダーが決まらないと、後ろのポジションが決まらない。

 サッカーを知り尽くした宮間は、この時点で、前線にくすぶる問題点に気がついていた。

 永里とて宮間の指摘は理解していたが、頭の中では別のことを考えていた。

「ウチは、点をとりたいから、CBにもボランチにもいけるポジションをとっていたのに……。ハーフタイムは失点のことばっかり話し合っていて。どうやって点をとるかという話し合いにはなっていなかった」

大会期間中は、ピッチ外でもそれとなく寄り添うことが多かった2人。その理由は同じポジションだから、というだけではないだろう

 攻撃でも浮き彫りになった問題がある。組織が整備されて、個の当たりが強いチームと対戦したときに、いかにしてボールをつないでいくのか。

 特に酷かったのは、前半の攻撃だった。DFの選手は比較的自由にボールを持つことが出来たが、そこから先につながっていかない。一気に前線の選手を狙った場合、足元につけようとすれば相手に体を寄せられてボールを奪われた。裏のスペースに出しても、パスのスピードが遅かったり、FWとのタイミングが合わなかったり、有効な攻撃が繰り出せなかった。中盤の選手が最終ライン近く下がって来てボールをさばいても、同じことだった。

<次ページへ続く>

【次ページ】 安藤は、守備でも存在感を見せられず……。

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