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飛ぶ、飛ばないだけが論点ではない!
ピッチャー視点から統一球を考察する。 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph byHideki Sugiyama

posted2011/08/08 10:30

飛ぶ、飛ばないだけが論点ではない!ピッチャー視点から統一球を考察する。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

8月4日現在、11勝(2敗)防御率1.38でセ・リーグ1位の内海。万年“エース候補”の座を返上なるか、後半戦の活躍にかかる期待は大きい

両リーグともスライダーを武器にする投手が成績上位に。

 内海だけではなく、今季の両リーグの投手成績を見渡すと、「確かに……」と頷かせる選手の名前が上位に並ぶ。

 セ・リーグではヤクルトの館山昌平投手、中日・吉見一起投手……。パ・リーグの防御率1位の楽天・田中将大投手に続いて日本ハムの武田勝、ダルビッシュ有両投手と、スライダーを武器とする投手がずらっと並んでいる。

 例えばダルビッシュの場合は、右打者に対してはストレートとスライダーを軸に組み立てるが、左打者にはストレートの割合が減る。その分はカットボールやチェンジアップなどを使うわけだが、いずれにしても左右の別なく軸の球種になっているのはスライダーなのだ。

 そして今季はそのスライダーが、以前に増してキレている。それがこの好成績の原因だった。

抜いたカーブを得意にする西武・岸は統一球の扱いに苦労。

 ただ、シームを巧みに操ると言うのは、スライダー投手だけに言えることではない。

 ボールの縫い目が高くなって空気抵抗が増え、変化球の曲がりが大きくなる。そうなれば他の変化球を武器にする投手たちも、その恩恵にあずかれるはずでもあるが、シームをうまく使えなければ、逆に苦労する投手も出てくる。

 その典型的な例が、カーブを武器にする西武の岸孝之投手ではないかと、堀内さんは指摘する。

「カーブは縫い目に指をかけてボールに回転を与える投げ方と、手首を使ってボールを抜いていく投げ方の2つがある。指をかける場合は、縫い目が高くなったことで回転をかけやすくなるメリットがあるが、岸は手首を抜いて投げる投げ方。統一球は縫い目が高くて、しかも表面が滑るのでボールを抜きづらい」

 今季は右わき腹の故障で出遅れたこともあるが、岸のもたつきの原因は、この統一球の特長をうまく制御できていない部分も大きいというわけだ。

高くなった統一球の縫い目の影響はストレートにも及ぶ。

 この縫い目の高さは速球を武器にする投手にも影響を与えている。

 例えばツーシーム系、フォーシーム系のいずれの真っ直ぐを投げるときでも、指の掛り具合でボールに微妙な変化が生まれる。

 これまではそれほど縫い目の山が高くなかったので、多少のずれはごまかせた。しかし統一球となって、その微妙な回転がより大きな差となって出る。シームをコントロールできる技術がないと、真っ直ぐ系のボールを投げていても、シュート回転やスライダー回転がより大きくかかることになる。その結果として投手の意思とは違うボール、いわゆる逆球となって痛打を食らうケースも出てくるわけだ。

【次ページ】 シームのコントロールが統一球時代の投手のテーマだ。

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堀内恒夫
内海哲也
岸孝之

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