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オリジナル路線を捨てた
シンクロに漂う暗雲。
~“ロシア化”への疑問~ 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

PROFILE

photograph byHiroyuki Nakamura

posted2011/08/03 06:00

オリジナル路線を捨てたシンクロに漂う暗雲。~“ロシア化”への疑問~<Number Web> photograph by Hiroyuki Nakamura

大会前は1日10時間を超える猛練習に取り組んだが、出場した全6種目で5位に終わった

 オリジナリティにこだわって輝かしい成績を残した競技は過去にいくつもある。東京五輪のバレーボール全日本女子、'60年代後半から'70年代初頭に輝かしい成績を残したラグビー日本代表、そしてぎりぎりまで相手をひきつけておいてのショートパスなどで世界一となったなでしこジャパン……。シンクロナイズドスイミングもまた、オリジナルの演技にこだわってきた競技だったが、今、大きな転換を図ろうとしている。ロシアから振り付け師を招いたのである。

 最初の実戦の場となったのは、7月の世界選手権だった。結果は、ロシア人の振り付け師によるプログラムで臨んだチームのテクニカルルーティン、フリールーティンともに5位。今大会にはロンドン五輪の大陸別の出場枠の獲得もかかっていたが、中国に敗れた日本はアジア2位となり、出場権が得られるかどうかは来春の最終予選に持ち越しとなった。

 成績が伸びなかったのは、後半に演技が乱れるなど、未完成であった点もある。だが、それ以上に感じられたのは、路線転換そのものへの不安である。

同じ方向であれば、見栄えの差がはっきりするだけではないのか?

 そもそも、日本がオリジナルの演技にこだわってきたのは、ロシアをはじめとする欧米勢との身体能力(身長の違い、手足の長さ)の違いにある。だから和のテイストを演技に取り入れ、同調性の統一を徹底するなど異なる方向性を打ち出し、自分たちが勝負する方法を追求してきたのだ。そして日本は、シドニー、アテネと連続してロシアに次ぐ銀メダルを獲得し、強豪の地位を築いた。

 そうした歴史があってなお、路線を変えたのは、北京五輪でメダルを逃してから国際大会でもふるわない現状を打破する意図があった。また、「オリジナル路線でもロシアにかなわなかった」と捉える関係者の見方も反映されているだろう。だが、オリジナリティを追ったからこそ世界2位にまでなれたのではなかったか。今大会で見せた、ロシアの雰囲気漂う演技が完成したとしても、同じ方向であれば、見栄えという点でより差がはっきりするだけではないのか。ロシアの振り付け師が、日本の特徴を認識した上でプログラムを構成するならまだしも、だが。

 オリンピックでのメダル再奪取、いや、ロンドン五輪出場権獲得へ向けても、暗雲の漂う今回の世界選手権だった。

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