甲子園の風BACK NUMBER

東北から甲子園を目指す球児たち。
「感謝」を胸に特別な夏が始まった。 

text by

鹿糠亜裕美

鹿糠亜裕美Ayumi Kanuka

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photograph by“Standard”

posted2011/07/19 12:35

東北から甲子園を目指す球児たち。「感謝」を胸に特別な夏が始まった。<Number Web> photograph by “Standard”

3月11日の震災後は、1カ月あまり練習を休み、救援物資の搬送などのボランティア活動に取り組んだ釜石商工の選手たち。自宅が流されたり、親戚を亡くしたりといった状況のなか、「震災をきっかけに、これまで以上に一球一球を大切に」(佐々木大樹主将)プレーし、野球の楽しさを精一杯表現した

特別な夏に野球の神様はどんなシナリオを描くのか?

 ただただ泣きじゃくる姿を見ながら、畠山善史監督は彼らのこれからを考えていた。最後の夏に結果を残すことはできなかった。しかし、苦難を背負いながら白球を追いかけた経験は何よりも尊いことを彼らに伝えた。

 この夏の釜石商工は、復興を掲げる岩手の高校野球の象徴と言える存在だった。開会式で盛岡第一の十良澤健二主将は「この大会を岩手の未来につながる第一歩とするために、私たち選手一同は全身全霊でプレーすることを誓います」と宣誓している。球児の一生懸命な姿は、被災地に二歩三歩と前に進む力となっているに違いない。

 春の準優勝校・水沢、昨年の甲子園出場校・一関学院など、「優勝候補」に上げられたチームが早々に姿を消した。その一方で、及川晋矢・上野史人のダブルエースを擁する大船渡、隙のない野球で勝ち進む久慈、打力と機動力を活かしグラウンドで躍動する水沢工業、大会ナンバーワン左腕・藤村隆成がマウンドを守る盛岡工業、好バッテリーを中心にまとまる盛岡一。さらには花巻東、盛岡大附属の上位常連校は、順調に勝ち進んでいる。

 2011年という特別な夏に、野球の神様は、どんなシナリオを用意しているのか。まだまだ予想外のドラマが生まれそうな気配が漂っている。

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釜石商工高校

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