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対談:激動の欧州リーグ、今年の見所
~セリエA&日本人プレイヤー篇~ 

text by

細江克弥

細江克弥Katsuya Hosoe

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photograph byPICS UNITED/AFLO(L),Getty Images(R)

posted2009/08/30 08:00

対談:激動の欧州リーグ、今年の見所~セリエA&日本人プレイヤー篇~<Number Web> photograph by PICS UNITED/AFLO(L),Getty Images(R)

CLではいま一歩だが国内が盛況のブンデスの見所は?

 かつての「世界最強リーグ」セリエAが人気低迷に陥る一方で、2006年のドイツW杯以降、ブンデスリーガは空前の好況を迎えている。昨季の1試合平均観客動員は3大リーグをしのぐ4万2539人で世界1位。
 1試合あたりの平均ゴール数2.9という超攻撃的なリーグを制したのは、伏兵ヴォルフスブルクだった。彼らはチャンピオンズリーグという夢の舞台でも旋風を巻き起こせるのか。そして、かつて1党体制を謳歌したタレント軍団、バイエルン復権の可能性は。

写真オフシーズンにはレアル・マドリーへの移籍で話題となったフランク・リベリー。昨季、リーグ優勝を逃したバイエルンの顔としての活躍が期待される

横井 バイエルンは新監督に就任したルイス・ファンハールの手腕によるところが大きいでしょうね。彼はオランダ人であり、バルセロナの指揮官を2度も務めた男ですから、攻撃的なサッカーを志向することは間違いない。それがハマれば、復権もあり得るかと。フランク・リベリーも残りましたし、今季は補強にかなりの力を注いでいる。国内ではやはり勝たなきゃいけない存在だと思います。

原田 ドイツ勢では、チャンピオンズリーグに出場しても唯一違和感のないビッグクラブですからね。ただ、昨季を見る限りではヴォルフスブルクがかなりいい。主力が残り、オバフェミ・マーティンスら新戦力の加入でパワーアップした点を考慮すると、チャンピオンズリーグでも十分に戦えるのではないかと思います。エディン・ジェコとグラフィチが形成する2トップの破壊力はヨーロッパでも屈指。彼らが昨季のコンディションを維持すれば可能性は十分と見ています。

横井 ヴォルフスブルクはチャンピオンズリーグとの掛け持ちをどう乗り切るかがポイントですね。ある意味、チャンピオンズリーグに全精力を注がなければ、リーグ連覇も十分にあり得る。ただし、グループリーグを突破するようなことになると、リーグ戦でのリズムを崩しかねない。本当の意味でのビッグクラブはチャンピオンズリーグとの掛け持ちを“目には見えない力”で勝ち抜いてしまいますが、まだそのレベルに達していないクラブが2つの大会で結果を残すのは難しい。ヴォルフスブルクにとっては初体験ですからね。

本当のビッグクラブだけが持つ“目には見えない力”。

原田 話が少しそれますけど、ビッグクラブの“目には見えない力”というのは本当にすごいですよね。たとえボロボロになっても、最小限の傷で危機を回避してしまう。例えば昨季のマンチェスターU。一時は守備陣が崩壊しかけてどうなるかと思いましたけど、終盤にはしっかり持ち直してタイトルを取る。やはり、チャンピオンズリーグを戦いながら国内での地位を守るためには、そういう力がないと難しい。

横井 選手や監督が代わってもしっかりと受け継がれますからね。本当に不思議というか、“目には見えない力”というものは必ずあると思いますね。

原田 そういう力が、バイエルンにはあるはずなんです。本当のビッグクラブだけが持つ“目には見えない力”。つまり、自身もそういう経験を積んでいるファンハール監督が、ドイツではバイエルンだけが持つパワーを引き出せるか。王座奪還はその点に懸かっていると思います。

 4大リーグの展望を経て、両者の対談は欧州王者を決する世界最高の舞台、チャンピオンズリーグに突入する。決勝の舞台がレアル・マドリーのホーム、サンティアゴ・ベルナベウであることから、“ある可能性”について言及せずにはいられない。

横井 チャンピオンズリーグで勝つために必要なのは実力と運、そして“目には見えない力”。この3つの要素をすべてそろえたチームが最終的にはビッグイヤーをつかみ取る。

原田 そうですね。やはり“目には見えない力”によって左右される部分は想像以上に大きい。いや、決してUEFAの抽選が怪しいとか、そういうことを言っているわけじゃないんですが……(笑)。ただ、レアル・マドリーにはビッグイヤーを狙える位置まで勝ち上がってもらいたいですね。張りつめた緊張感に包まれた舞台で、久々に“銀河系”を見てみたい。

横井 ぜひ見たいですね。決勝の舞台はレアル・マドリーのホームであるサンティアゴ・ベルナベウですから、「何としても」という思いはあると思います。もちろん、サンティアゴ・ベルナベウでの戴冠を狙うのはバルセロナも同じ。あの舞台でバルセロナがビッグイヤーを掲げようものなら、レアル・マドリーにとっては最大の屈辱、バルセロナにとっては極上の優越感を味わうことになるでしょうから。ベルナベウでのクラシコ……。想像しただけでワクワクしますね。ただ、そろそろ例年とは違う顔合わせも見てみたい気がしますけど(笑)。周囲の予想を完全に覆すような。'03-'04のポルトvs.モナコっていうのはちょっとアレですけど。

原田 それはちょっと、アレですね(笑)。

【次ページ】 今季のCLではヴォルフスブルクとチェルシーが面白い。

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