MLB Column from USABACK NUMBER

スコット・ボラスの読み違い。
~MLBスーパーエージェントに不況風~ 

text by

李啓充

李啓充Kaechoong Lee

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posted2010/01/09 08:00

スコット・ボラスの読み違い。~MLBスーパーエージェントに不況風~<Number Web> photograph by Getty Images

現在、57歳。ボラスは自身で会社経営も行っており、代理人交渉の他にスカウティング事業も行っている

「スーパーエージェント」の異名で知られるスコット・ボラス。強気の交渉戦術で、これまで次々にFA選手の最高年俸記録を更新してきた。

 しかし、ここ数年「読み違い」が目立ち、スーパーエージェントの名が泣くような事例が相次いでいる。

 たとえば、2007年にFAとなったアレックス・ロドリゲスの契約交渉。法外な値段をふっかけられたヤンキースが交渉から撤退してしまうと、他に契約をオファーする球団もなく、ロドリゲスの行き場がなくなる事態となった。

 困ったロドリゲスが大富豪のウォーレン・バフェットに仲介を頼み、ヤンキースに「詫び」を入れる形でようやく交渉が再開。結果的には、期間10年・総額2億7500万ドルの史上最高額で契約が成立したものの、実際の交渉がボラス抜きで進められたことはよく知られている。

ボラスの読みが外れたせいで大幅に減俸されたバリテック。

 さらに、ロドリゲスよりもインパクトにおいては大きく劣るが、ボラスの強気戦術が失敗したせいで実害をこうむったのが、レッドソックスのジェイソン・バリテックだ。

 昨季オフ、レッドソックスが申し出た「年俸調停」をボラスが拒否。結果的にバリテックの獲得年俸は、「調停」を受けていた場合よりも大幅に減額されてしまった。年齢と打力の衰えを考えたとき、バリテックに大枚をはたく球団などあるはずはなかったのに、「レッドソックス以外に欲しがる球団が現れるはず」としたボラスの読みが見事に外れたのだった。

 さらに今オフ、ボラスはジョニー・デーモン、マット・ホリディ、エイドリアン・ベルトレと三人の大物FAをクライアントとして抱えていたが、三人ともボラスの読みは大きく外れた。

ヤンキースとの交渉が決裂したデーモンはいまだ行き先未定。

 1月5日現在、ベルトレはレッドソックスと、ホリディはカージナルスと合意が成立したと言われているが、ベルトレは1年・900万ドル、ホリディは7年・1億2000万ドルと、それぞれ、その合意額は、ボラスの当初の要求額、4年・4000万ドル、8年・1億8000万ドルを大きく下回った。それだけでなく、ベルトレの場合、フィリーズが3年・2400万ドルをオファーしたのにこれを拒否して交渉決裂、最終的にはるかに安い額でレッドソックスと契約する羽目になってしまった。

 さらに、ジョニー・デーモンの場合、本人もヤンキースも再契約を希望していたのに、ボラスの強気戦略のせいで交渉が決裂、いまだに行き先が決まらない事態となっている。ヤンキースの「2年・1900万ドル」のオファーに対し「4年・5200万ドル」と法外な要求を突きつけたのだから、交渉が決裂したのも無理はなかった(しかも、デーモンの交渉がこじれる過程で、しびれを切らした松井秀喜はエンゼルスと契約を結んでしまった)。

 まだヤンキース復帰の可能性がゼロになったわけではないといえ、ヤンキースの最終オファー「2年・1900万ドル」を上回る条件を提示する球団はないと見られており、ボラスの強気交渉のせいで、デーモンに実害が及びそうな雲行きとなっているのである。

<次ページに続く>

► 【次ページ】  長引く不景気がボラスの強引な交渉戦略を狂わせる。

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