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ベッカムはレアルを恨むのか。 

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鈴井智彦

鈴井智彦Tomohiko Suzui

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photograph byTomohiko Suzui

posted2007/01/22 00:00

ベッカムはレアルを恨むのか。<Number Web> photograph by Tomohiko Suzui

 1月14日、首位を走るセビージャに逆転ゴールをぶち込んだマジョルカのマキシ・ロペスは、いまもバルサを愛していた。

 「マジョルカはあんまりいい状況にはないけど、それでもボクたちのゴールでバルサに手を貸すことができるなんて最高じゃん」

 彼にとって、バルサとはなんだったのだろうか?

 アルゼンチンのリーベルからバルサに移籍した直後のチェルシー戦で、3人のディフェンダーに囲まれながらも値千金のゴールを決めたのは、もう1年半前になる。

 だが、派手にチャンピオンズ・リーグデビューを飾ったものの、その後のマキシがカンプ・ノウの芝を踏んだのはほんの数回だった。あからさまに、ライカールトが望んだ選手ではなかったのが想像つく。リーベルに断れなかったとか。コネ入団とか。とりあえず、形だけでも冬の補強をしないといけなかったとか。

 1シーズン半過ごしたバルサでの出場試合数はトータルで19試合。リーグ、カップ戦、チャンピオンズ・リーグを合わせての出場時間は、マジョルカでの半年間にも及ばない数字だった。

 しかしマキシは立派だ。なかば飼い殺しだったのに、ライカールトを恨むどころか、バルサにいたことを誇りにしている。

 必要ないとわかると、クラブは選手に冷たいものだ。逆恨みされても仕方ないくらいに。たとえば、レアル・マドリーのフェルナンド・イエロやバルセロナのグアルディオラらは、キャプテンまで務め、クラブのシンボルだったにもかかわらず、ロッカールームから追い出すときはあっさりだった。あばよ、と。ふたり揃ってカタール・リーグにいるのを見たとき、なんだか悲しくなった。

 そしてベッカム。

 ベッカムがベンチから外されたことに対して、酷いという声もある。カペッロは冷たいとも。でも、指揮官が交代すれば選手も入れ替わる。そんなのは日常茶飯事だ。

 でも、ベッカムは彼らしいナイスな道を選んだ。彼に釣られて、何人かの選手がアメリカへ渡る可能性もでてきた。70年代をもう一度、である。ペレにクライフ、ベッケンバウアー、ジョージ・ベストなどのビックネームが活躍したのは約30年前の昔話。結局あのときの北米サッカーリーグはあまりパッとしなかったが、それはアメリカにおけるサッカーが、まだスペインでのベースボールのようなものだったからだろう。

 状況は変わった。94年にW杯を開催し、代表チームは世界の強豪とわたりあっている。国民ももうサッカー音痴ではない。日本よりも。たぶん。近年ではドナドーニやジョルカエフらも渡った。スペイン人では元レアル・マドリーのアイトール・カランカがデンバーにいる。いっときの日本やメキシコ、カタールのようにメジャーリーグがバブルになる可能性は、ある。

 形はどうあれ、フットボールは続けられるのは、幸せだ。ロマーリオ、40歳。まだまだ現役だ。インテルで来季継続はないといわれているフィーゴには、アラブのクラブが接触しているという。しかも、いまよりも高いギャラで。振り返ればマリオ・ケンペスだってバレンシアを出てから各大陸を転々とし、最後はインドネシアにいたんですから。そのとき、マタドール(闘牛士)は42歳。こうなると、金じゃない。フットボール愛だ。

 ひとり蚊帳の外におかれたベッカムは、ベルナベウの観客席で試合を観戦する。笑顔でファンに手を振る。好感度はマキシ・ロペスといい勝負。カペッロを恨むことなく、レアルを愛していた。さすがさわやかを売りにしているだけはある。次の興味は、会長に「いらない」呼ばわりされたロナウドか?

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