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ルーキーウォッチング〜ブレイザーズの3人を見よ! 

text by

小尾慶一

小尾慶一Keiichi Obi

PROFILE

photograph byAFLO

posted2007/02/09 00:00

 レギュラーシーズンも半ばを過ぎた。この時期になると、ルーキーたちの将来像がおぼろげながら見えてくる。NBAの水に慣れ、力を発揮し始めた新人にとって、本当の勝負はこれからである。

 後半戦、ルーキー・ウォッチングを楽しみたい人に、お薦めのチームをひとつ紹介しよう。それは、ウェスト12位のポートランド・トレイルブレイザーズだ。プレーオフ出場を3季連続で逃しているチームだが、若さ・潜在能力の面ではNBAトップクラス。特に、今季は将来有望なルーキーが3人も加わった。

 中でも、新人王の有力候補と目されるのが、ドラフト6位のブランドン・ロイ。22歳のコンボガード(PG/SG)だ。爆発的な運動能力はないが、素早いファーストステップと緩急自在のドリブルペネトレイトで、相手守備を切り裂く。視野が広く、落ち着いていて、ボディーバランスも良い。晩年のジョーダンのように、ポンプフェイクの後に、崩れた体勢からジャンプシュートを沈めることもできる。すでに攻撃の第2オプションであり、土壇場でボールを任せられることも多い。平均14.4点、1.4スティールは、1年目の選手としてはトップの成績である。

 ドラフト2位のラマーカス・オルドリッジも楽しみな存在だ。現在22歳で、211cmのPF/センター。226cmのウィングスパン(両手を広げた時の指先から指先までの長さ)を生かしたブロック、そして、高い打点からの中距離ジャンプシュートが武器だ。身体の線が細く、選手としての完成度は低いが、将来性はロイ以上と見られている。肩の手術で出遅れたものの、1月以降(の14試合では)、8.3点、1.2ブロックと調子を上げている。

 最後のひとりは、僕のお気に入りの選手。スペイン出身の20歳、ドラフト27位のセルジオ・ロドリゲス(スペイン語読みではセルヒオ)だ。トリッキーなプレーはジェイソン・ウィリアムズに、パスで仲間の能力を引き出すスタイルはスティーブ・ナッシュに例えられる。判断力に優れ、球離れがよく、シュートを打ちすぎない。一つひとつのムーブが機敏で、プレーに華があるのも特徴だ。最年少・外国人ということもあり、彼は3人の中で最も適応に苦しんだ。しかし、きらりと光るプレーを見せ始めているのは確か。平均アシストは3.3と平凡だが、48分換算のアシストは、なんと、13.5。これは、ナッシュに続き、NBA2位の成績である。1月14日には、デンバー・ナゲッツを相手に、2Qだけで13点、6アシストをあげ、将来に貢献。アレン・アイバーソンに「彼の可能性は無限大だ」と絶賛されている。

 ルーキーチャレンジ(1年目選手と2年目選手のオールスターゲーム)には、3人の中でロイだけが出場する。オルドリッジとロドリゲスは、選出されなかった。このセレクションが間違いであることを、後半戦で、証明したいところだ。

 ブレイザーズが一夜にして強豪に化けることはないだろう。だが、後半戦ほとんど勝てなかった昨季と違い、今季のうちに勝率5割に到達する可能性はある。もちろん、将来的にはプレーオフ上位進出も夢ではない。その頃には、ルーキー3人のうちの誰かが──あるいは3人そろって──オールスターゲームの本戦でプレーする姿を拝めるだろう。

セルジオ・ロドリゲスのふたつの悩み

ロドリゲスには悩みがある。ひとつは、英語。昨夏の世界選手権では、スペイン代表の一員として来日。基本的に英語で受け答えをしていたが、やはり、たどたどしかった。語学教師の指導のもと、急ピッチで成長しているようだが、ストレスなくコミュニケーションをとるにはしばらくかかりそう。もうひとつの悩みは、パスが好きなこと。「チームメイトが気持ちよく得点できること、それが僕にとって一番大事なんだ」と語っていた彼。得点力を求められるNBAでは、意識してシュートを打つように心がけているようだ。

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