見たことのないものを見せつけられると、人はドギマギしてしまうものだ。「このミランはどうプレーするのか、僕にも読めない」と指揮官レオナルドも苦笑する。ロナウジーニョ、ボリエッロ、そしてベッカムの3トップ。見る者にとって、ゴール前での彼らの連動攻撃も新鮮だが、4-3-3の中盤やサイドバックもとにかく走る。セードルフやピルロによる足元の妙技は、やはり惚れ惚れするほどだ。
8年続いたアンチェロッティ政権時代には考えられなかった“走り、闘い、創造し、ゴールする”ミラン。FWインザーギやGKアッビアーティといった実績あるベテランたちを起用しない決断を経て、レオナルドが開幕前から温めてきたチーム像が、ようやく形になり始めた。
その一翼を担うのが、2季目の後半戦レンタルでやってきたベッカムだ。年明けのジェノア戦で先発すると、早速5ゴール大勝のお膳立て。19節のユベントス戦でも発煙筒による白煙の中で、ロナウジーニョへのアシストを決めた。マークの外し方やクロスのタイミングなど、独特の間合いが、不慣れなセリエAのDFたちを次々に翻弄する。地元紙は「まるで前半戦もいたかのようだ」と称賛した。
ダービーではインテルに完敗。「無手勝流」の脆さを露呈した。
それでも首位インテル追撃の大一番だった先月24日のダービーでは、数的有利になりながら完敗し、モウリーニョから「7人でも勝てた」と嫌味を受ける始末。さらに3日後のイタリア杯でもウディネーゼに敗退、週末のリボルノ戦ではホームでドローと、ペースが若干鈍った。
監督にもプレーの行方が読めない「無手勝流」なのだから、ある程度の脆さや不安定さはつきものといえよう。それでもベッカムがモチベーションを失うことはない。
「今のチームがやっている攻撃パターンはとても独特だ。だけど一流プレイヤーたちならば、どんな布陣にも対応しなくちゃならない。ミランは大いなる伝統を持っている点で、僕の古巣マンチェスターUと同じだ。だから居心地がいいんだよ」
「ロスの自宅で夜中3時に一報を知り、衝動で思わず泣きそうになった」のは、チャンピオンズリーグ決勝トーナメントの1回戦カードが古巣に決まったときだった。マンチェスターUは、グループB最終節でMF長谷部のヴォルフスブルクと対戦。若手ばかりで構成したBチームにもかかわらず、アウェーでドイツ王者を3対1と圧倒、実力の差をまざまざと見せつけた。
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筆者プロフィール
弓削高志
1973年、宮崎県生まれ。出版社勤務の後、2001年単身イタリアへ。2003年から「東京スポーツ」欧州サッカー通信員。南伊レッジョ・カラブリアを拠点に野球、バレーボールなども手がける。好きな選手はインザーギ。最近興味があるのは「イタリア忍術界」。



























