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どうしたレアル、いつものことか? 

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鈴井智彦

鈴井智彦Tomohiko Suzui

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photograph byTomohiko Suzui

posted2005/09/22 00:00

どうしたレアル、いつものことか?<Number Web> photograph by Tomohiko Suzui

 ヘタフェ、ラ・コルーニャ、セルタ、オサスナ……、ってなんなんだ。トップグループを走る顔ぶれをどう解釈していいものか。困る。レアルとかバルサとか、ベティスにビジャレアルは?チャンピオンズ・リーグに出場している彼らは苦しんでいる。

 ちょうど1年前の今ごろも、こんなニュースが流れていた。レアルはチャンピオンズ・リーグでレヴァークーゼンに敗れ(0対3)、続いて週末にはエスパニョールにも負けた(0対1)。あのときのオチはカマーチョの辞任だったけど、いまのところはルシェンブルゴを解任する考えはないみたいだ。

 そう、現在レアルは3連敗の7失点。セルタ戦2対3、リヨン戦0対3、エスパニョール戦0対1。リヨンのFWヨン・カリューは饒舌だった。

 「レアル・マドリーは素晴らしい選手が揃っているけど、ディフェンスを知らないからね」

 はい。そうです。昔からそうでした。

 確かにセットプレーはレアルの弱点ではあるし、ロベルト・カルロスの背後を狙われるのは今に始まったことでもない。ディフェンスが脆いのは、前々から承知である。そこにアリゴ・サッキ(レアル、テクニカル・ディレクター)が何も感じてないわけがない。しかし、1点ぐらいくれてやる、1点失っても3点決めりゃエエ、これがレアル。でも3点決めてるうちはよかったが、どうしたもんか1点どころか、ゴールが決まらない。3点取り返すどころか、逆に失ってりゃ世話がない。主審の笛にも泣かされて。嗚呼。

 悪いときのブラジル代表と似ている。セビージャの100周年記念試合でも、ブラジルはボール・キープ率で圧勝していたが先制ゴールを奪われた。調子がいいときは面白いほどゴールが決まるカナリアも、調子が悪いとたちまち集中力を欠いていく。最近のロナウドがいい例だ。気分屋だ。技術がなくても集中力は高いドイツ人とは対照的。サッカーの神様も二物は与えません。

 ルシェンブルゴはカナリアを意識している。無理もない。カカ、アドリアーノ、ロナウド、ロビーニョ、ロナウジーニョといったタレントでブラジル代表は溢れている。レアルも才能が溢れている。だからといって、何度も中央からリズミカルなショートパスで相手守備網を崩そうと試みるスタイルまで似せるのはどうだろうか。ラウールはロナウジーニョではなかった。ジダンが恋しい。中盤で起用されているバプティスタは不器用である。カカじゃない。セビージャでFWにコンバートされたのが痛いほどわかる。

 もちろん、すべては否定できない。ルシェンブルゴ色が確立されるのを待つしかない。毎シーズン、新人が加わるレアルの序盤戦は、いつもスロースタートである。ジダンのときも、ベッカムのときも、戦術が決まるまで時間がかかった。だから、そんなに悲観的になることもないだろう、とも思う。

 天敵FCバルセロナの調子もいまひとつだ。レアルと揃ってアウェーでアトレティコに負けた。でも、チェルシーが独走するプレミアや、なんだかんだいってバイエルンのブンデスリーガもいいけど、たまにはレアルとバルサが追いかける立場にあるのも、ある意味面白いかと。黙っていても、そのうちAクラスにいるだろうから。レアルとバルサが昨シーズンよりトーンダウンしたというよりも、どのクラブもお堅いスタイルを身につけているというのが今シーズンだ。

 チャンピオンズ・リーグにおいても、レアルとバルサはボール支配率だけではそうそう負けない。スペイン代表もそうだけど、ボールを走らせることにかけてはピカイチだが、ゴールへの執念はオマケみたいに感じるときがある。レアルはゲームを支配したが、ゴールへの執念でエスパニョールに負けた。レアルやバルサには、自陣にへばりついてでも勝ちたいエスパニョールのような相手が今後も続くだろう。それでも、彼らは美しく勝つのが宿命みたいなものだ。でなければ、ヨハン・クライフに怒られますから。

レアル・マドリー
欧州チャンピオンズリーグ

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