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判定も世界基準を目指せ。 

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海老沢泰久

海老沢泰久Yasuhisa Ebisawa

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2008/03/25 00:00

判定も世界基準を目指せ。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

 Jリーグが開幕した。

 去年は最後の最後で鹿島が逆転優勝して、久々にいい気持ちを味わった。

 今年も第1戦を札幌に4対0で勝っていいスタートを切った。去年は第6戦まで勝てなかったのだから、雲泥の差だ。この調子なら内田や岩政や田代が代表に呼ばれたり、アジアチャンピオンズリーグを戦わなければならなくなったので疲労が心配だが、そこそこのことはやってくれるだろうと思っている。金持ちの浦和のような補強はしてないのだから、不様なことにならなければそれでよい。

 しかし、リーグ全体に目を移すと、気がかりなことがないでもない。リーグ開幕に先立っておこなわれたゼロックススーパーカップでのPK戦の判定の影響だ。

 試合は2対2で終わり、鹿島がPK戦で広島に負けたのだが、鹿島が負けたからいうのではない。

 あのとき、鹿島のGKの曽ヶ端は、広島のPKを2本止めた。しかし、2本ともやり直しになり、広島のキッカーがそれを決めた。PKのルールでは、GKはキッカーがボールを蹴るまではゴールライン上から前に出てはならないのに、曽ヶ端は蹴る前に前方に跳んでいたというのが、やり直しになった理由らしい。スロービデオで見ると、曽ヶ端はたしかに一瞬前に前方に跳んでいた。だから審判の判定はきっと正しかったのだろう。

 後日、サッカー協会はイエローカードを連発し、三人も退場者を出したこの試合の主審を、試合をコントロールできなかったとして無期限の出場停止にした。しかし、PKのやり直しの判定については、曽ヶ端の跳ぶのが早かったとして妥当性を認めた。

 この協会の判断もおそらく正しい。協会が審判の判定を守らないと、選手や監督が審判の判定に服さなくなるからだ。審判が選手や監督にこづき回されるプロ野球がいい例だ。

 「リーグ会長が守ってくれない」

 というプロ野球審判の嘆きを、ぼくは何度きいたか分からない。

 しかし、それでも曽ヶ端のあの動きを否としたことは問題だとぼくは思う。今後、PKの際にトラブルの種になるにちがいないからだ。

 GKは、よっぽどのろまな選手でない限り、キッカーがボールを蹴る瞬間ではなく、蹴るために動き出した瞬間に反応を起こす。足を1歩や2歩は踏み出すだろう。そうしなければあの猛スピードで飛んでくるボールを止められないと知っているからだ。しかし、それで止められたときは、今後キッカーは蹴るよりも先にGKが前に出たとアピールできることになったのである。あるいは、ゴールを決められたキッカーが自分で先に動いていたといってやり直しを求めるかもしれない。そのとき審判はどうするのだろう。GKの早い動きを認めても、それはそれで問題になる。

 だが、それよりも問題なのは代表戦などの国際試合のときだ。

 ゼロックススーパーカップの直後に、ヨーロッパチャンピオンズリーグのシャルケとポルトのPK戦を見たが、シャルケのGKが曽ヶ端と同じようなすばやい反応で2本のPKを止めたのを、3人の審判は何もいわずに認めた。そういう審判の前で、Jリーグの四角四面のルールのとおりに、日本のGKだけが相手の蹴るまでバカ正直にゴールライン上に立っていたらどうなるだろう。試合に負けるだけでなく、のろまなGKだと笑われやしないかといまから心配しているのである。

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