佐藤琢磨 グランプリに挑むBACK NUMBER

ホームコース 

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西山平夫

西山平夫Hirao Nishiyama

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photograph byMamoru Atsuta(CHRONO GRAPHICS)

posted2006/06/02 00:00

ホームコース<Number Web> photograph by Mamoru Atsuta(CHRONO GRAPHICS)

 佐藤琢磨にとってモナコ・グランプリは三つのホーム・グランプリのうちのひとつである。

 ひとつは言うまでもなく祖国日本グランプリ。二つ目はジュニア・フォーミュラ時代からホームステイし、F1まで上り詰めたイギリス・グランプリ。三つ目がいま妻子と居住するモナコ・グランプリである。モナコには昨年から住み、子供もこの地で生まれた。

 「レースの間は自宅からサーキットまでボートに乗って通っていますが、自宅からレースに行く経験はF1では初めて。今日も朝早くにサーキットで仕事があって、いったん家に帰ってお昼ご飯食べて昼寝して(笑)から、またサーキットに来ました」

 プラクティス初日を明日に控えた水曜日、佐藤琢磨はそんなふうに“ホーム・グランプリ”の奇妙さを語った。朝、妻子に見送られてレースに行き、夕方彼らに出迎えられる“自分の庭”のグランプリなのである。

 モナコは進行スケジュールも特殊で、通常のグランプリなら金曜日から日曜日まで3日間連続で消化してしまうが、モナコは木曜日に試走初日があり、金曜日1日は午前中にサポーティング・イベントの予選があるが、グランプリはこの日お休みである。

 市街地を一時的に閉鎖してサーキットに仕立て上げ、その途中に長いトンネルがあるのもモナコならでは。琢磨は「トンネルに入っていく時の感じが好きです、トンネルの中はアクセル全開で300km/hくらいになりますが、すごく不思議な感じがします」と言い、加えて「いつも買い物に行っている道路で明日から走ります」と、また笑った。

 佐藤琢磨のモナコ挑戦はこれが3回目。初年度の2002年はトンネル出口でクラッシュ。テストドライバーのため不出場だった2003年を挟んで、2004年はエンジン・ブロー。昨年はBARホンダが不出場だっただけに「今年はチェッカーを見たい」と切望していた。

 鈴木亜久里オーナーは「ウチの乗りにくいクルマでモナコを走るのは大変。モンタニーは“ハンドルは重い、ハンドルのキックバックは強い、バランスは悪い”と言ってる」と苦戦になることを覚悟。その通り、モンタニーは300km/hから70km/hに急減速する海のシケインで何回となくミスを重ねた。だが、琢磨の同地点でのミスは週末を通じてたった1回のみ。決勝も「最初の数周はオーバーステアが強くてつらかった」と言いながら、それ以降は快調なペースで走行を重ねていた。

 しかし、今年もまた琢磨はチェッカーを見られなかった。レース中盤、給油直前のトンネル出口でマシンの加速が鈍り、1速ギヤに入れっぱなしの“緊急モード”でピットイン。この時は戦列に復帰できたが、やがてエンジンが息絶え、ピットロード入り口にマシンを止めたのだ。リタイアの原因は、エンジンをつかさどるECU(電子制御ユニット)の故障だった。

 「楽しんで走れていただけに残念です」と、レース後の琢磨。悔しさは人一倍だろうが、それと同時に難コースを攻め切れた満足感もあったろう。

 2週間後はもうひとつのホーム・レース、イギリス・グランプリだ。

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