MLB Column from USABACK NUMBER

「松井秀喜トレード説」の針小棒大 

text by

李啓充

李啓充Kaechoong Lee

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photograph byYukihito Taguchi

posted2005/07/05 00:00

「松井秀喜トレード説」の針小棒大<Number Web> photograph by Yukihito Taguchi

 私の場合、日本のメディアの大リーグ報道はインターネットでしか見ることができないのだが、6月29日、日本の複数のメディアが、「松井秀喜がトレード候補」とする記事を書いていたので、腰を抜かすほど驚いた。

 仕事柄、当地の大リーグ報道は毎日入念にチェックしているが、松井をトレード候補とした記事など心当たりがなかった。「松井がトレード候補」とする見出しを見たときは、てっきり、「日本の記者達が特ダネを物にした」と思ったほどだった。

 しかし、松井をトレード候補とする記事の本文を読んで、その「針小棒大」ぶりに、ほとほと呆れてしまった。「ニューヨークタイムズ紙が松井はトレード候補と報道した」というのが「松井がトレード候補」とする記事の唯一の根拠だったのだが、件(くだん)のニューヨークタイムズの記事は、「松井はトレード候補」などとは一言も書いていなかったからである。

 では、何と書いてあったかというと、「ヤンキースには契約にトレード拒否条項を持つ選手が多い。だから、トレードによる補強は困難が伴う」ということを強調するために、契約に拒否条項を持たない「数少ない」選手の名を三人(松井とポサダとシェフィールド)列挙しただけなのである。どこをどう読んだら、「現実に松井がトレード候補に上っている」という解釈ができるのか、首を傾げざるをえなかった。

 そもそも、問題になったニューヨークタイムズの記事は、「ヤンキース(チーム不振の打開策を)討議、答えは内部にあると結論」というタイトルを見てもわかるように、「大きなトレードはありませんよ」とする主旨の記事だった。「トレードはない」という内容の記事であるのに、松井の名が一カ所だけ出てきたことを根拠に、「松井トレード説」をひねり出したのだから、その「創造性」には感心せざるをえない。しかも、今のヤンキースのチーム事情を考えたら、「松井を放出することは自殺行為」であることは誰の目にも明らかだと思うのだが、いったい何を考えて「松井にトレード説」などと、火のないところに煙を立てたがるのだろうか?

 というわけで、「松井トレード説」には何の信憑性もないから日本のファンには安心してもらってよいのだが、もう一人の松井となると話が別だ。メッツが松井稼頭央の放出先を探しているのは事実だからだが、いまのところ、「年俸が高い」ことがネックになって引き取り手が現れていないという。

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