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データで日本グランプリを振り返る。
~2008年のF1界を巡る状況は?~ 

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西山平夫

西山平夫Hirao Nishiyama

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photograph byMamoru Atsuta(CHRONO GRAPHICS)

posted2008/12/26 00:00

データで日本グランプリを振り返る。~2008年のF1界を巡る状況は?~<Number Web> photograph by Mamoru Atsuta(CHRONO GRAPHICS)

 師走の日本は、12月5日にホンダが同社のDNAともいうべきF1からの撤退を発表するなど、モータースポーツに暗い話題ばかり。その約1週間後、スズキとスバルが相次いでWRC(世界ラリー選手権)への参戦を中止するという“連鎖撤退”状況が生まれた。ただしその後の連鎖はなく、モータースポーツ・リストラの動きは年末を迎えていったん休止状態に入った模様だ。

 ホンダの撤退発表時に話題になったひとつに、2009年の鈴鹿サーキットに3年ぶりに戻って来る日本F1グランプリの開催がどうかという不安説があったが、これはホンダ側から「撤退の影響を受けることなく、予定通り改修を進めていく」との回答があった。

 周知の通り、日本グランプリは2009年から鈴鹿サーキットと富士スピードウェイが持ち回りで隔年開催となる。鈴鹿はホンダが、富士はトヨタが親会社のために、親会社参戦と開催の関係が微妙なところだが、富士スピードウェイ側は「2010年の開催に変更はない」と言っている。

 その富士スピードウェイ(富士SW)が今年の開催後、来場者へのアンケートを実施した。その集計結果が発表されたので、内容をダイジェストで紹介したい。

 アンケートは富士のF1サイトからインターネットで2週間かけて募集したもので、回答数は8276件。このうちツアーバス利用者は750件。回答者は男性が約80%だが、これはカップルで来た場合、男性が回答するケースが多いためではないかと富士SWは推測している。

 回答者は、F1観戦経験1〜3回、3〜5回、6回以上の3パターンに分けるといずれも33%台。富士で初めてF1を観た観客は11%。F1観戦ビギナー、中堅、ベテランがまんべんなく集結した様子が見てとれる。

 年齢層は、20〜29歳:19.6%、30〜39歳:40.9%、40〜49歳:30.9%と、主流は30〜40歳代。50〜59歳になると6.4%とガクッと下がる。サッカーなどと比較するとかなりの高年齢層のように思えるが、これはチケットが3日間通しで数万円と高価なことも関係しているのではないか。

 居住地は関東(山梨県含む):61.1%、中部(三重県含む):25.4%、関西:7.1%と、富士SWが関東圏のサーキットであることが分かる。東の富士、西の鈴鹿と日本の2大サーキットはしっかりと棲み分けができているということか。

 観戦日数をみると、金・土・日の3日間:37.1%、土・日:42.4%、決勝のみ:14.6%であり、3日間通しで観ている熱心な観客が多いことに驚かされる。これは3日間晴天に恵まれたことも大いに関係しているはずだ。

 運営に関する満足度は10点満点方式で、もっとも高い評価を得たのは「交通アクセスのスムーズ度」(8.6点)、次いで「スタッフや警備員の対応」(8.3点)であり、ふたつとも昨年観客の大きな非難を浴び、一部は訴訟問題にまで発展したもの。富士SWはこの点を重視して、場内バス留め置き方式やスタッフ数を2007年の3000人から5000人に増員して、笑顔で観客に接するようスタッフ教育を徹底。観客との信頼を回復したいという願いはひとまず達成されたようだ。また、観戦席満足度で最も高かったのはC2の8.2点、次いでC1とA2の8.1点だが、C席は昨年“マシンが見えない”ことで一部払い戻しまで行なわれた、いわく付きのゾーンだったことは皮肉である。

 次回観戦以降に関しては、必ず観戦したい:49.6%、時間や費用の条件が整えば行きたい:45.1%となっていて、コアなファンが多いことを証明する数字であるが、2年後のF1状況がどうなっているかにもよるだろう。ホンダの不在、日本人ドライバーの有無も大いに影響するだろうし、なによりトヨタが F1に参戦しているかどうかが問われるところである。

 今年の富士のF1が成功したのは3日間の晴天と、観客数を7万人少なくしたことが挙げられる(3日間合計で6万9000人減の21万3000人。決勝は 3万人減の11万人)。これに交通システムのオーバークオリティ、スタッフ増員なども併せて考慮すると赤字だったことは想像に難くない。ゆえに2010年は今年の経験を生かして、経費を削りながら増収を図ることが富士SWのミッションだろうが、その施行のための時間は2年ある。

 「交通アクセスは予想以上にうまく行った。2010年に今年ほどのスムーズさは保証できないが、これを崩すことはできない」と、富士SWサイドは言う。2010年の日本グランプリは観客にとって果たしてどんなイベントになるのだろうか。

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