小林繁の死去に際して、
“謝罪する江川”に違和感アリ。

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text by Kei Nakamura

photograph by Chihiro Okubo

小林繁の死去に際して、“謝罪する江川”に違和感アリ。

 違和感がある。

 小林繁氏が心不全で急逝し、江川卓氏が会見を開いた。

「小林さんに対して、申し訳ないという思いは終わっていません。こちら側に原因はあることですし、一生消えないものだと思います」

 その後も、新聞やテレビで何度となく取り上げられた。そして、江川氏は「今でも申し訳ないと思っている」と繰り返した。また、江川氏は騒ぎになることを考慮し、小林氏の告別式の参列も控えたという。

 言うまでもなく、小林氏と江川氏には「空白の一日」における因縁がある。だから、メディアの心理として、江川氏にコメントを求めたくなる気持ちも当然だと思う。

 だが、どこかに、加害者の江川氏、被害者の小林氏という構図が見え隠れしているような報道の仕方には不自然さを覚える。

 そもそも、心情はわからないでもないが、江川氏が謝る問題ではないのだ。ただ、江川氏は巨人に入りたかっただけで、小林氏とトレードする形で巨人に入るというのは江川氏が考えたことではない。

 もし、謝罪しなければいけない人がいるとしたら、それは当時の巨人と阪神のフロント関係者だろう。

「二人ともしんどかった」という小林氏の言葉が、すべてだ。

 '07年、あの日から28年のときを経て、二人は酒造メーカーのCMで共演した。事前の打ち合わせなどは一切なく、66分間話し込み、その一部が実際にCMとして放送されたのだ。

 その対談の中でも、江川氏は、「長いこと、申し訳ございませんでした」と頭を下げる。

 だが、小林氏がすぐさまこう返したのだ。

「謝ることないじゃん!」

 そして、こう続けるのだ。

「しんどかったよな。俺もしんどかったけど。二人ともしんどかった」

 これがすべてだ。被害者ということでいえば、江川氏も同じだろう。

<次ページに続く>

► 【次ページ】  入団拒否した江川氏も“投手の旬”を棒に振る代償を。

(更新日:2010年1月27日)

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筆者プロフィール

中村計

中村計

1973年千葉県出身。ノンフィクションライター。某スポーツ紙を経て独立。『Number』(文藝春秋)、『スポルティーバ』(集英社)などで執筆。『甲子園が割れた日 松井秀喜の5連続敬遠の真実』(新潮社)で第18回(2007年度)ミズノスポーツライター賞最優秀賞受賞。他に『佐賀北の夏』(ヴィレッジブックス)、共著に『早実vs.駒大苫小牧』(朝日新書)などがある。『雪合戦マガジン』の編集長も務める。趣味は、落語鑑賞と、バイクと、競艇。


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