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34歳パワーの源泉。  

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酒巻陽子

酒巻陽子Yoko Sakamaki

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posted2008/05/03 00:00

34歳パワーの源泉。 <Number Web> photograph by AFLO

 267回目を迎える伝統のミラノダービーに、ACミランのFWインザーギが人一倍燃えている。今季リーグ戦では調子が上がらず、いまだに5位に甘んじているチームに痺れを切らせたベテランストライカーは、ダービーへの調整を兼ねたリボルノ戦にてハットトリックを成し遂げる快進撃を披露した。

 「ダービーに勝って、4位もゲットする」

 絶好調のインザーギはリーグ戦4試合連続でゴールを連発。わずか「1」だったゴール数を「9」に伸ばした。100分に1本生み出されるその千金弾は、現在リーグ最多得点ランキングの上位を占めるユベントスのトレゼゲ、ジェノアのボリエッロの150分に1本の得点率を上回っただけでなく、浮沈の激しいミランの攻撃陣を凌いで点取り屋と化した。

 残り試合も一桁になった今日、一気に燃え上がった「インザーギパワー」の発端は、チームの成績不振にあった。真剣勝負の春が到来しても、相変わらず黒星を重ねていたミラン。挙句の果てには、伊メディアに記録と実績にケチをつけられても、「奇数の年だから」と成績不振を正当化するチームメイトも存在した。今季序盤に患った鼠径(そけい)ヘルニアに泣かされ、インザーギ自身にとっては不完全燃焼で終わりかけようとした今、弱音を吐く同僚に腹を立てた34歳のエースは、順位浮上を目指して自ら立ち上がったのである。怒りを力に変え、右に、左に、頭と全身を使ってゴールを重ねるインザーギに刺激されたのか、選手たちはようやく目を覚ました。昨季のダービーでは負け越しただけに、勝利奪回にモチベーションを高めたのだ。

 インザーギと同世代のMFコッツァ(レッジーナ)も怒りをきっかけに、「らしさ」を取り戻した。最終ラウンドと位置づけられるこの時期、彼の身体は実にキレている。とりわけ、セリエA残留をかけたパルマとの直接対決では、そのパワーが頂点に達した。PKにより対戦相手に先制され、1点を追う形で迎えた後半、千金の価値を持つゴールを2つ献上。勝負の行方を左右する1.5列目で、アグレッシブな攻撃を武器に終始高いパフォーマンスを演じることで、ベテランの、そして司令塔の意地を見せたのだった。

 戦力均衡化が進み、更にアタッカー好みの傾向によって、近年のセリエAでは「4分の3」のみを仕事場とする選手が激減したこともあり、司令塔は死語になりつつある。司令塔不要論が飛び交う中、その典型とされるコッツァは悪評を払拭するかのごとく、トレクアルティスタ(司令塔)としての存在感をアピールすることに尽力した。司令塔の活躍でもたらされた勝利は、降格の危機に悩めるチームに勢いを与えることとなった。

 攻撃のパワーダウンによって、なかなか勝てないミランとレッジーナ。怒りがきっかけで破竹の勢いを取り戻したベテランたちは、チームの目標を達するべく死闘に挑む。

フィリッポ・インザーギ
フランチェスコ・コッツァ
レッジーナ

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