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ユベントスの忌まわしい過去。 

text by

酒巻陽子

酒巻陽子Yoko Sakamaki

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posted2004/12/07 00:00

ユベントスの忌まわしい過去。<Number Web> photograph by AFLO

 「イタリアのサッカーから薬物を追放すべきだ」

 6年前にローマのゼーマン監督(当時、現在レッチェ)による衝撃発言で明るみに出たユベントスのドーピング疑惑が、一応の決着を見た。先月25日にトリノ地裁が、ユベントスの元主治医アグリコラ氏に対し、懲役1年10カ月の有罪判決を下したのだ。これにより、1994年から1998年までの「黄金時代」と呼ばれたその輝かしい実績がドーピングによるものだったと事実上立証された。

 欧州が誇る最強クラブの「あってはならない出来事」は、単にユベントス・サポーターが寄せてきた期待が裏切れらたことだけではなく、潔癖さをモットーとするスポーツ界を根底から揺るがす結果となった。

 世界アンチドーピング機構は「前代未聞の罪過。疑惑時代にユベントスが獲得したタイトルは剥奪されるべきだ」とペナルティを主張した。また英国紙「タイムズ」は「ユベントスの有罪は薬漬けのサッカーという羞恥を明るみにした」と非難した。

 ある意味で被害者といえるのが、オランダのアヤックスであろう。同国の「ノスTV」は1995年の不運敗戦(PKの末、ユベントスがアヤックスを下してチャンピオンズリーグ優勝)について言及、「タイトル取り消し」を主張した。

 ユベントスが薬漬けになってまでも手にしたかったのは、地位と権力である。’90年代初頭、宿敵ミランがまさに「無敵」の勢いで驀進するさまは、ユベントスにとって耐え難い出来事だった。リーグ優勝から遠ざかり、「格下」のナポリやサンプドリアにまでタイトルをさらわれ、欧州カップ戦においても、セリエBから昇格してまもないパルマが躍進を遂げた。かつて味わったことのない屈辱。前途多難を思わせる周囲の状況から、ユベントスは、薬物使用という安易な道を選んでしまったのだ。

 今月に入って、カリアリのFWゾラが「トップコンディションを維持するために精進してきた。パルマ時代の僕と同僚は最大限の力を発揮するために犠牲を払った。それは厳しい試練だった。それなのに一部ではドーピングに頼っていたなんて卑怯だ」とユベントスを批判し、反響を呼んだ。168cmという恵まれたとは言い難い身長でも、依然として現役を続ける38歳のストライカー、コンディションを維持し続けるための苦労を人一倍知っているゾラの言葉には重みがあった。ゾラの一言でCONI(イタリア・オリンピック協会)も、ユベントスに敵対心を示した。

 プロスポーツ選手として当然である、体力づくりという労から逃げて薬に依存する者は、単に臆病でしかない。有罪判決を受けたアグリコラ医師の言うがままに、当時のユベントスの選手たちがクラブ側に抗議せずに薬を服用したのも、私にとっては意気地のないことに思えてならない。

 ユベントスのドーピング疑惑。裁判はまだまだ続き、薬のお陰で栄冠を獲得した者への非難の声は、日に日に増すばかりだ。その一方で、かつての「ミラン全盛時代」の指揮官であったカペッロが、薬に頼ることなく、現在の「最強ユベントス」を構築しているのは皮肉としか言いようがない。

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