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新渡戸稲造が訴えた「野球害悪論」。
現代の野球と、敵を欺くプレーの是非。 

text by

小関順二

小関順二Junji Koseki

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2011/07/16 08:00

新渡戸稲造が訴えた「野球害悪論」。現代の野球と、敵を欺くプレーの是非。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

パ・リーグで最も盗塁を警戒されている楽天の聖澤諒。バッテリーとの駆け引きも野球の妙味だ

相手の心理を逆手に取る「ピックオフプレー」の妙味。

 こういうプレーはまだある。1死一、三塁の場面を迎えると、多くの野球ファンはダブルプレーを防ぐためにも、一塁走者は二塁に盗塁したほうがいいと思っている。実際、そうしているチームが多かった。

 しかし、今はなかなか二盗に踏み切れない。なぜなら、捕手が二塁に投げるケースが増えているのだ。捕手のスローイングと同時に三塁走者はスタートを切って本塁を陥れる――これが4、5年前の常識だったが、今はそう簡単ではない。二塁手が前に出てきて捕手の球をカットするケースがあるからだ。

 二塁ベースの1メートルくらい前でカットして本塁に投げれば、どんなに足が速い走者でも本塁前で殺すことができる。三塁走者がスタートを切らなければ二塁手はボールをカットせず(スルーして)ベースカバーに入った遊撃手に捕らせる。

 実際、「捕手は二塁に投げない」と早合点した一塁走者が二盗を企図して殺されるシーンを何回か見た。これらを総称して「ピックオフプレー」と言う。私はこういう騙し合いが大好きだ。

“魔術師”と呼ばれた三原脩がめぐらせた敵を欺くテクニック。

 正々堂々としたプレーしか認められなかったら野球はこれほどの人気スポーツになっていなかっただろう。そういう中から“魔術師”とか“智将”と言われる三原脩(元西鉄監督など)のような監督も出現する。

 ちなみに、左打者の打順で左投手をマウンドに上げる「ワンポイントリリーフ」を初めて実行したのは三原である。また、相手の先発投手が右腕か左腕かわからないとき、スターティングメンバーの野手のところに投手を起用し、相手投手が右腕だったら左打者、左腕だったら右打者に代える作戦を「アテ馬」と言い、三原が多用して有名になった。ともに騙しのテクニックである。

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三原脩

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