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From:イングランド「不思議の国、イングランド」 

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杉山茂樹

杉山茂樹Shigeki Sugiyama

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photograph byShigeki Sugiyama

posted2005/10/28 00:00

From:イングランド「不思議の国、イングランド」<Number Web> photograph by Shigeki Sugiyama

物価は高いし、サービスもイマイチ。

イングランドという国で誇れることは一体何なのか。

サッカーが誇れること?でもサッカーだって支えているのは……

 日本の物価は安い。最近つくづくそう思う。帰国すればホッとするし、欧州を訪れれば、一転、身が引き締まる思いになる。

 イングランドなどは、高い欧州の中でも群を抜く存在だ。いま1ポンドは200円強。だが、実際には、100円ぐらいの価値しかない。物価は日本の2倍はする。聞けば、現在2ポンド(400円強)もするロンドンの地下鉄の初乗り(ゾーン1区間)は、近々3ポンド(600円強)に跳ね上がるそうだ。恐るべしでしょ。煙草は一箱約1000円もする。マックも約1000円。レストランでじみーに食事をしても昼食で3000円、夕食で5000円は覚悟しなければならない。

 特に食べもの系の値段にはうんざりする。いつも、何の悩みもなく能天気に旅を続けているように見えるこの僕にだって、多少なりとも疲れはある。〆切も抱えていたりするので、ちょっとしたプレッシャーもある。ホテル暮らしの煩わしさもある。異国にいる緊張感も、いまだ完全に抜け切れているわけでもない。食事にホッとする憩いの瞬間を求めたくなるのだけれど、それが叶わない。高いだけではない。マズさも加わる。ちょっとやそっとのことでは、満足な味には出くわせない。繊細な味、美味なものはほとんどない。大抵が大雑把。こんなものを毎日食べ続けていると、寿命が最低でも10年は縮みそうな、身体に優しくなさそうなものばかりだ。実際、ロンドンには、日本では絶対に見かけない類のおデブサンを、たくさん見かけることができる。

 それは、先日までいたドイツも同様。そんな中で、毎日を過ごしていると、途端に里心がついてくる。1000円札1枚でそれなりの味、バラエティな味が楽しめる日本が、必要以上に健全な社会に感じられる。

 韓国やポルトガルへの郷愁にも駆られる。モウリーニョ監督は、いったい毎日何を食べているのか。食事にストレスは感じないのか。僕はベティス戦(チャンピオンズリーグ)の試合後の記者会見で、手を上げて聞いてみたい衝動に駆られた。

 チェルシーのホーム「スタンフォード・ブリッジ」の最寄り駅は、地下鉄ディストリクト線のフルハム・ブロードウェイ駅。試合後、僕の滞在ホテルの最寄り駅である、ユーストンスクエア駅まで戻るためには、1度エッジウエアロードで、乗り換えを挟まなければならない。だがその乗換駅のホームに駅員は不在。場内アナウンスも一切ない。ホームに停車していた電車が、上りなのか下りなのか、そこにいる99%の乗客は知らなかった。誰もがホームで右往左往していた。そんな時、突然、出発を知らせるベルが鳴り、ドアが閉まった。僕は、多くの乗客と共に車内に駆け込んだ。はたして電車は、どっちの方向に進むのか。乗客の誰もが一か八かの賭だった。そして半分の人は外れ、半分の人は当たった。車内は爆笑。当たり組は、外れ組の肩を叩いて慰めた。ちなみに電車の車内はゴミだらけ。床には新聞が散乱し、ペットボトルやコーラの空き缶が、ゴロゴロと電車が揺れるたびに転げていた。退廃的とはこのことを言う。

 宿泊ホテルは、ユーストンスクエア駅近くにある三つ星。ネットの安売り価格でさえ15000円もしたが、日本だったら3000円でも泊まりたがる人はいなさそうな超オンボロ……

 翌早朝、僕はプライベートタクシーを雇い、ガトウィック空港に向かった。値段は恐ろしく高かったが、移動手段が他にないので致し方ない。タクシーはベンツだった。が、ドライバーは素人だった。ガトウィック空港へ行くのはどうやら今回が初めてらしい……

 空港に到着し、アムステルダム行きの「イージージェット」のカウンターに向かえば、体重80キロ近くはありそうな女性地上係員は「あなたのカバンの重さは22キロ。2キロオーバーなので、8ポンド追加料金をいただきます」と、不機嫌そうに言った。

 別のカウンターで20ポンド札を出し、12ポンドお釣りをもらおうとしたら、1ポンド硬貨が7枚、50セント硬貨が10枚、計17枚の硬貨をカウンターの上に、ジャラジャラッと差し出した。不機嫌そうな女性係員はこういった。「朝だからお札がないのよ」だって。瞬間、僕の後ろにいたオランダ人は、腹を抱えて笑い出した。僕も釣られるようにハハハと大笑いしてやった……

 イングランドは不思議な国だ。サッカー以外誇るものはない。そのサッカーにしても、支えているのは外国人。だったら、首相のクビも、ポルトガル人のモウリーニョにすげ替えた方が良いんじゃないか。リベリアでは、ジョージ・ウェアが首相になりそうだって話しだし……

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