MLB Column from WestBACK NUMBER

WBC次回大会に望むこと 

text by

菊地慶剛

菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi

PROFILE

photograph byNaoya Sanuki

posted2006/03/27 00:00

WBC次回大会に望むこと<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

 日本人ファンにとって最高のかたちで幕を閉じたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)。自分自身も日本代表チームが優勝する瞬間の現場に立ち会え、大変幸運に思っている。そこで前回予告していたように、今回WBCの取材を通じて感じたことを個人的に総括してみたい。

 まず、今回メジャー選手参加の下に行われた初の国際大会となったWBCの存在意義だが、これは間違いなく野球界に新たな歴史を加えたといっていいだろう。一部の報道には、国内メディアが意外に冷たい反応だったと報じているが、現場の盛り上がりは半端ではなかった。米国が移民で成立している国だと改めて想起させるほど、球場に集まった各国の応援は熱狂的なものだった。WBCが米国および参加国の野球ファンに新たな野球の魅力を提供したのは紛れもない事実だ。だがそれ以上に大きかったのが、参加したメジャー選手たちが国別に分かれて戦う醍醐味を理解したことではないか。参加選手のほとんどが「機会があればまたやりたい」と口を揃えているように、次回以降さらに豪華な顔触れが揃う可能性が高くなるのは嬉しい限りだ。

 だが一方で、やはり主催者のメジャーリーグ機構と選手会に押し切られ、やや強行開催された部分は否めず、大会を通じていろいろな歪みが生じたのも見逃すことはできない。特に気になったのが次の3点だと思う。

●開催期間

 個人的に今回の日本代表の優勝は、あくまで“この時期”で最もチーム状態が良かったからだと思っている。2月1日からキャンプインし、さらにチームとして短期間ながら合同練習、練習試合を行った日本代表や現在シーズン真最中のキューバ代表とは違い、メジャー主体の各国代表は2月中旬から所属チームのキャンプに参加し、第1ラウンドが始まる数日前に集合し、1回練習試合を行ったまま本番に臨んでいる。

 第2ラウンドを終え準決勝進出を決めたドミニカ代表のアクタ監督が「やっと選手たちが試合で戦える体勢になった」と話しているように、果たして各チームが本当の実力を出すことができたのか。3月開催は選手にとって過酷な気がする。

 さらにカージナルス・田口選手が「イチローのようにすでにチーム内の地位が確立している選手はいいですが、このキャンプで開幕に向け首脳陣にアピールしなければならない選手たちは難しいでしょう」と説明してくれているように、いくら代表に選ばれても各選手の置かれている状況で、この時期だからこそ参加が難しくなってくる。だからこそ。直前になって参加を見合わせた選手が続出したと考えて良いだろう。

●参加資格

 今回は代表チームに選ばれる資格があまりに曖昧すぎたと思う。以前ここでも取り上げたが、ピアザ選手のように出生地や国籍を無視して家系さえ合えば違った国の代表チームに参加できるのはかなり違和感がある。次回以降、もっと参加規定を明確にすべきだろう。

●審判および組み合わせ

 すでに日本でも議論されているように、普通の国際大会なら審判は試合当事国以外から選ばれるのは当然のこと。日本代表対米国代表戦で話題となった疑惑の判定は米国出身の審判だったから起こったとは言えないと思うが、回りから非難されるような材料は少しでも取り除いた方がいいだろう。

 組み合わせも然り。予選プールから勝ち上がったチームが再び同じプールで戦うというのは、他の国際大会で聞いたことがない。短期決戦で日本と韓国が3回も対戦しなければならなかったのは、明らかに組み合わせの弊害だった。これも次回から他の国際大会を見習うべきだ。

 これらの問題点を解消するには、やはりメジャーリーグ機構と選手会だけに任せるのでなく、各国から代表者を集め組織委員会をつくり、そこを中心に運営を行っていくべきだと思う。そのためにも日本プロ野球機構には是非ともイニシアティブをとって、主催者側と協議を続けてほしいと願って止まない。

 最後に日本代表にも一言。見事にWBC初王者に輝いたものの、薄氷を踏む勝利だったことは明らかだ。すでにアテネ五輪でも経験しているように、プロの精鋭を揃え単純に“日本の野球”をするのでは限界に達している。今後は世界に目を向け、海外、特にメジャーの野球に対応して戦っていく姿勢が求められる。今後はオフに日米野球などというお祭りイベントをせず、今回のWBCに参加した代表チームの1つを日本に呼んで対抗シリーズを行ったりして、3年後の次回大会に備えるべきだ。今回のWBCの熱狂をみて、野球が現在の人気低迷を打開するのは、サッカー同様国際試合だということを感じた。日本野球は今回のWBCを大いに利用すべきだろう。

ページトップ