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中村俊輔が目指すもの。 

text by

二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byTamon Matsuzono

posted2009/04/01 22:29

中村俊輔が目指すもの。<Number Web> photograph by Tamon Matsuzono

 疲労の色をにじませながら、中村俊輔は痛々しい姿で試合後のミックスゾーンに現れた。

 前半終了間際にバーレーンのマルズークに踏まれて腫れ上がった右手には、しっかりとテーピングが施されてあった。

「右手は別に握れるから折れてはいないと思うけど、まあヒビぐらいは入っているかもしれないね」

 苦笑いまじりで、患部を見つめる。勝利を収めた安堵感からか、リラックスした表情で試合を振り返りながらも、攻守におけるチームの〝ちょっとした〟課題を気にかけていた。

「1プレー、1プレーを大事にしないと……長友がでかいヤツとヘディングで競ったときに、カバリングができているのか、とかね。闘莉王が(カバリングに)行ってたりしたけど、もっとチームとして詰めていかなければならないところがある」

 守備だけでなく、攻撃における指摘も。後半19分、相手のクロスをクリアして中村にボールが渡ってのカウンター攻撃。左サイドの玉田圭司を経由してフリーでパスを受けた内田篤人がニアにシュートを放って、バーに直撃させたシーンのことだ。

「できれば1人がファーに走って、シュートをファーに蹴っていれば、(GKが)弾いて(得点が)入っていたかもしれない」

 判断ミスではないとしても、内田とアタッカーがシュートのイメージを共有できていれば、ファーを狙ったほうが得点を呼び込める確率が高かったと、中村は考えているようだった。

「1プレーを大事に」という言葉の先には、最終予選を突破した後に待ち受けている世界との戦いがあるはずだ。世界に出ると、攻撃では少ないチャンスをモノにしていかなければならず、守備ではわずかな対応の遅れが失点に結びついてしまう。

 1プレーをどう大事に扱うかによって、試合の命運が分かれてしまうことを中村はこのバーレーン戦でも自ら実証した。後半2分、27mの直接FKを決めるのだが、蹴る前に1度、助走でフェイントを入れている。フェイントにつられて前に出た壁が主審に下げられた直後に、ボールはゴールマウスに吸い込まれていった。それに横にいた遠藤保仁にボールを出して、ポイントをずらしてから打ってもいる。得点の確率を少しでも引き上げるべく、工夫と労をつくしたゴールであった。

 微に入り、細をうがつ――。

「もっと上(のレベル)に行くために、まだまだやらなければいけないと考えている」

 バーレーン戦で出場した選手のうち、国際Aマッチ出場が20試合に満たない選手は内田や長友佑都ら7人を数える。世界との経験値が低い岡田ジャパンのメンバーに、中村は“繊細さ”の重要性を深く伝えようとしている。

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