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“守備の華”遊撃手で最高の選手は?
20年間の数字から見えた、ある真実。 

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田端到

田端到Itaru Tabata

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photograph byShigeki Yamamoto/Hideki Sugiyama/Koji Asakura

posted2010/01/22 10:30

“守備の華”遊撃手で最高の選手は?20年間の数字から見えた、ある真実。<Number Web> photograph by Shigeki Yamamoto/Hideki Sugiyama/Koji Asakura

「歴代で最も上手いショートは久慈」という定説。

 '96年1位の久慈照嘉にも注目だ。昨年『遊撃手論』(久慈照嘉監修・矢崎良一著、PHP研究所)という本が出版されたように、いまだに「歴代で最も上手いショートは久慈」と口にする人は少なくない。

「ショートには、捕ることと投げることを別々にやるタイプと、捕ることと投げることを同じ流れの中でやるタイプがいる。後者の代表が久慈さん」

 こう語ったのは井端弘和である。普通のショートは捕るときに止まるが、久慈は止まらない、と。

 宮本慎也も、捕球と送球を同じ流れで行うことにこだわっている遊撃手だ。捕球するだけなら、一直線で打球に入ったほうが速い。しかし正確な送球をするためには、多少距離を損しても、足を使って回り込むように打球に入ったほうが投げやすい、という意味のことを語っている。

 また、私が興味をひかれるのは、久慈が'09年から阪神の守備走塁コーチとして、鳥谷敬の守備を徹底指導していることだ。

 鳥谷は'08年に5.13という破格のRFを記録した。しかし久慈の指導を受けた'09年はRFがダウンし、その代わりに失策が大きく減ったのである。わかりやすく言えば、エラーは減ったが、守備範囲は狭くなった。

 この鳥谷の変化は久慈コーチの存在とどこまで関係があるのか、鳥谷の守備をどっちへ向かわせようとしているのか。今季、その答えが出るだろう。

ひとりだけズバ抜けたスーパー遊撃手がいる!!

 続いてパ・リーグ。これはもう、表を見てもらえればわかる。ひとりだけズバ抜けたスーパー遊撃手の存在が浮かび上がる。

●パ・リーグ 年度別レンジファクター1位の遊撃手
年度 選手名 試合 刺殺 補殺 失策 簡易RF
1991 田中幸雄(日本ハム) 130 199 380 11 4.45
1992 吉田剛(近鉄) 104 147 285 9 4.15
1993 広瀬哲朗(日本ハム) 108 185 346 10 4.92
1994 浜名千広(ダイエー) 129 207 381 19 4.56
1995 田中幸雄(日本ハム) 130 209 406 6 4.73
1996 田中幸雄(日本ハム) 130 208 387 14 4.58
1997 小坂誠(ロッテ) 135 197 459 14 4.86
1998 小坂誠(ロッテ) 123 236 417 16 5.31
1999 小坂誠(ロッテ) 130 230 421 13 5.01
2000 小坂誠(ロッテ) 135 226 489 11 5.30
2001 小坂誠(ロッテ) 140 252 492 16 5.31
2002 小坂誠(ロッテ) 93 175 298 3 5.09
2003 小坂誠(ロッテ) 134 226 483 8 5.29
2004 阿部真宏(近鉄) 118 197 360 7 4.72
2005 川崎宗則(ソフトバンク) 102 170 283 6 4.44
2006 金子誠(日本ハム) 126 198 391 10 4.67
2007 大引啓次(オリックス) 124 167 428 17 4.80
2008 中島裕之(西武) 122 204 359 12 4.61
2009 大引啓次(オリックス) 105 157 357 9 4.90
※ 簡易RF=(刺殺+補殺)÷試合数
※ 赤字はRF5.0以上、失策5以下

 小坂誠(ロッテ-巨人-楽天)だ。

 '97年から'03年まで7年連続のRF1位。しかもその数値がすごい。ただひとり5.0以上のレンジファクターを、当たり前のように毎年叩き出している。

【次ページ】 「平成の牛若丸」「小坂ゾーン」と称される守備の超人・小坂。

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