ジーコ・ジャパン ドイツへの道BACK NUMBER

第8回:ジーコのため息――シンガポールには辛勝したものの……。 

text by

木ノ原久美

木ノ原久美Kumi Kinohara

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photograph byKoji Asakura

posted2004/04/01 00:00

第8回:ジーコのため息――シンガポールには辛勝したものの……。<Number Web> photograph by Koji Asakura

 試合後の会見が終わると、ジーコ監督は大きなため息をひとつついた。決定力不足――。目標としていた勝ち点3は得たが、相変わらずの課題を見せつけられた試合になった。

 3月31日、2006年ワールドカップ(W杯)一次予選シンガポール戦で、日本は後半37分に交替出場のMF藤田が勝ち越しゴールを決め、2−1で辛勝した。この結果、2戦目を終えて日本は勝ち点を6に伸ばし、予選3組の首位に立ち、この日インドに5−1と大勝したオマーンが2位につけた。

「前半あれだけチャンスをつくりながら1点しか決められない。30本打って入ったのは2本。これは大問題」と、苛立ちとも呆れとも取れるコメントがジーコ監督の口をついて出た。

 今回のW杯予選で初のアウェー戦の会場は収容人員6000人規模のジャラン・ベサール・スタジアムだったが、その9割を日本のファンが埋め、スタンドから耳慣れた声援で送られる。“ホーム”のような雰囲気だった。

 その中で、日本は立ち上がりから猛攻を仕掛け、初先発のDF加地が右サイド、DF三都主が左サイドを何度も駆け上がる。けがから復帰した小野を交えて、中田英、中村、稲本のいわゆる和製“黄金の4人”で組んだ中盤で、中田が精力的に動き、小野がバランスを保ちながらチャンスにゴール前まで顔を出すプレーを見せる。特に小野は、プレーセンスのよさを随所に発揮して、日本の攻撃を後押しした。

 気温も湿度も高い中でのプレーで後半動きが落ちることを考えると、前半で試合を決めたかったが、柳沢と前半33分に先制点を決めた高原の2トップは切れが悪く、シュートのタイミングや角度、強さ、プレー判断に狂いが多く見られ、ゴール前のチャンスを生かせなかった。

 ジーコ監督は、「これだけチャンスを作れているのだから、シュートを決められないのはチームとは別の問題」として個人の問題であると示唆。さらに、「ゴール前で焦りというか冷静さがない」と指摘した。

 ただ、柳沢のように切れもゲーム勘も悪い選手を先発させた、監督の采配はどうか。少なくともハーフタイムで柳沢を交代させて、日本を発つ前の練習から好調を維持していたFW玉田、あるいはこの日交替出場ながらいい動きを見せたFW鈴木を起用したほうがよかったのではないか。

 しかも、MF藤田(後半21分)と鈴木(後半23分)を投入したタイミングは失点後。結果的にはその鈴木が後半37分に左CKからのボールを相手GKと競り合って落とし、これを藤田がゴール右隅に決めたのだが、交替の対応が後手に回っている感は否めなかった。

 日本は攻め続けながら点が取れない状況が続き、反対にシンガポールの鋭いカウンターを受けてディフェンスが混乱し、相手に攻め込まれるという危険な場面も何度かあった。後半17分の失点も、高原のプレーがオフサイドになった直後のゴールキックから。DF加地がインドラをマークしていたが、一瞬の隙をつかれて、この日終始素早い動きを見せていた若手FWに決められた。シンガポールは、攻撃の組み立てについて、チームで意識がよく統一されていた。

「前半にもっと点を入れておけばよかった。自分たちで何とかできる相手と思ったのが(苦戦)の原因だったかも」と小野は振り返る。中田も選手の精神面を指摘し、「オマーン戦に続いて、チャンスに決められないのが一番の要因。そこはそれぞれの気持ちの問題だと思う。個人個人の選手が考えなくてはいけないこと。このまま続けば、正直言って、長い道のりを乗り切るのは少し難しくなると思う」と危機感を募らせている。

 チームとして欧州組と共有する時間の短さ、監督の欧州組へのこだわりを含めた選手起用、選手の意識の問題、決定力不足など、問題は山積みのままだ。いずれも一朝一夕に解決できる問題ではないが、このあたりで修正にとりかかる必要があるのではないか。このまま場当たり的な対応を続けていては、チームの積み上げもさほど期待できず、今後の展開は厳しくなるばかりだろう。

 次の予選のインド戦(6月9日、ホーム)では、なんらかの変化を見たい。

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