佐藤琢磨 グランプリに挑むBACK NUMBER

起きたことはしょうがない…… 

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西山平夫

西山平夫Hirao Nishiyama

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posted2005/03/25 00:00

起きたことはしょうがない……<Number Web> photograph by AFLO

 「いま佐藤選手がコースを見に行きましたゼ」

 金曜日の夕方、サーキットを出てクアラルンプールのホテルへ帰ろうという時になって、後から追いついた同行のカメラマンがそう言った。

 ン? コースを……(おかしいな?)とは思った。ドライバーが歩いてコースを見に行くことは珍しいことではないが、それは試走開始前日の木曜日まで。今日はもう午前と午後1時間ずつ走ったのだから、コースを見に行く必要はまずない。それともどこか気になって仕方がない部分でもあるのだろうか?

 しかしその時は(そういうこともあるんだろう……)と、深く考えもしなかった。なによりいち早くホテルに戻って汗だらけの身体にシャワーを浴びたい、その一心だった。

 翌朝、サーキット到着とほぼ同時に「佐藤琢磨、発熱のため不出場」の報を聞いた。その後取材を進めたり、BARホンダからの発表などを聞いたりするうちに、前日カメラマンが言っていたことが理解できた。サーキットから出しなに彼はパドックを1コーナー方面に歩いて行く佐藤琢磨とすれ違った。それでてっきりコースを見に行ったのだろうと思ったのだ。コース以外ドライバーが用事のあるようなところではない。しかし、佐藤琢磨が向かっていたのはコースではなく、メディカル・センターだったのだ。

 佐藤琢磨のマネージャー、アンドリューギルバート・スコットがこれまでの経緯と病状を説明する。

「昨日の夕方から微熱があってメディカル・センターで点滴を受けたがひどい状態ではなく、走る意欲はあり問題はなかった。ところが今朝になって38・5度の熱が出て下がらず、脱水状態がひどい。ドクターからのアドバイス、そしてチームと相談して、高温のマレーシアでもあり乗らない方がいいということになった。本人も『しょうがない』と納得している。血液検査の結果が出たが、デング熱やインフルエンザではないことがハッキリした。ウイルスによる発熱ということで、この後サーキットには来ないで、飛行機に乗れるようになったらイギリスに帰す」

 しかし決勝当日も佐藤琢磨はサーキットのメディカル・センターを訪れた。まだ熱が下がらないというのだ。ただし食欲はあるというから胃は大丈夫のようだ。

 結局、琢磨は月曜日にイギリスに帰った模様だが、ドライバーの“病欠”は珍しい。日本人ドライバーでは中嶋悟がティレル時代の1990年のポルトガルで風邪により決勝不出場になったことを覚えている。

 マレーシアは高温多湿、ドライバーはレース中に2リットルもの汗をかき、体重が2キロも減ってしまうという。多くのドライバーは1リットル入りのドリンク・ボトルをコクピットに用意するが、なかなか呑み切れるものではないらしい。あるところからは体力勝負のところがあって、身体が十分マレーシアの気候に馴れていることが前提条件になる。それもあって琢磨は前週からマレーシアのランカウイ島でトレーニングを積み、体調は絶好調だったはずなのに不思議なことが起こった。 

  しかし琢磨本人が言うように起きてしまったことは「しょうがない」のだ。心機一転、次戦バーレーンでの快走を期待したい。もっともバーレーンも暑さは厳しいが……。

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