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東アジアサッカー選手権 VS.中国 

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木ノ原句望

木ノ原句望Kumi Kinohara

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photograph byKenjiro Sugai

posted2008/02/22 00:00

東アジアサッカー選手権 VS.中国<Number Web> photograph by Kenjiro Sugai

 アウェーの試合で相手の挑発に乗らずに、いかに自分たちのプレーをして結果を出し、勝ち点を積み上げるか。今後予定されているワールドカップ予選でも、常に選手が要求され、試される部分だ。しかも、相手国とのサッカーだけではない関係も、試合に投影されることが少なくない。『スポーツと政治は別』ということはよく言われているが、そう簡単にいかないのも現実だ。

 2月20日に中国・重慶で行われた東アジア選手権第2戦、日本が1−0で勝利を収めた中国戦はまさにそういう場だった。

 中国当局の呼びかけで、スタジアムに集まった地元観客が日本チームにブーイングや野次を派手に浴びせることもなく、2004年7月のアジアカップの時のような大きな混乱はなかったが、ピッチの上は別だった。

 遅れて入るレイトタックルや、足の裏を見せて行くラフプレーなど、中国選手は一歩間違えば相手に大怪我を負わせかねないような危険なプレーを平気で繰り返した。北朝鮮出身の審判は、そういうプレーを取り締まるどころか中国寄りの不可解な判定を繰り返すばかりで、試合は荒れる一方だった。

 そんな中で、最後まで冷静さを失わずに闘い抜いて勝った日本選手には、彼らのメンタリティの強さと意識の高さを改めて感じた。しかも、試合の内容も前の試合からの改善が見られた、悪くないものだった。

 この試合、GKに川島から楢崎、センターバックの1人に水本から今野など、3日前北朝鮮戦(1−1)から先発メンバーのうち6人が入れ替わった。山瀬功治、中村憲剛が入った中盤では、彼らと遠藤保仁、安田理大、鈴木啓太がうまく絡んで攻守によいリズムが生まれた。特に、ボランチを鈴木1枚から中村を加えた2枚にしたことで、攻守両面で安定感が出たように見えた。

 前線は2戦連続先発出場の田代有三のみの1トップだったが、鹿島アントラーズのFWはシュートチャンスをうかがいながら身体を張ったプレーを見せて、前半17分の山瀬の決勝ゴールを演出した。

 左サイドバック駒野友一の上げた鋭いクロスに、田代がニアに走り込んでGKのセービングミスを誘った。こぼれたボールはペナルティボックスに顔を出していた山瀬の足元に流れ、横浜FマリノスMFの右足での鋭い一振りとなってゴール右手に突き刺さった。相手GKのミスというラッキーな面もあったが、各選手のよさが組み合わさって生まれた点とも言える。

 北朝鮮戦に途中出場で左MFとしてプレーした安田は、この試合でも前に出る積極性を発揮していた。後半10分には中村のロングスルーに反応して飛び出し、相手ディフェンスと競り合いながら1点モノの好機を生み出した。だが、安田はこのときのプレーで、相手GKの1発退場に値する危険なとび蹴りに遭って胸を痛め、担架でピッチを後にする羽目になってしまった。(ここで相手GKが警告ですんだのは審判のおかげだ。)

 長いボールでサイドから仕掛ける中国を、前半はうまく抑えきれずに何度か攻め込まれてしまっていたが、後半はその部分も修正されたように見えたし、センターバックで初先発をした今野のプレーもまずまずだった。なにより、90分間よく集中して冷静にプレーを続け、相手と激しく競り合う場面が随所に見られたのは、北朝鮮戦から改善された部分だろう。

 この試合の結果、23日最終戦の韓国戦で勝てば大会優勝の可能性も生まれた。ケガ人も増えて、岡田監督は選手起用にさらに悩むことになるだろうが、優勝以上に、チームとして何を見つけることができるかに注目したい。

 ただし、審判の起用には細心の注意を払ってもらいたい。選手の安全を守るべき審判が、その最低限の役割も果たせないとなれば安心してプレーできない。個人の技量として大会レベルにないのであれば起用すべきではないし、低レベルのレフェリングが対戦国同士の関係を不必要に悪化させる危険性もある。通常、W杯も含めて各種大会では対戦国間の関係も加味して審判の起用が決められているが、中国戦ではそれは感じられなかった。今回の件では競技と大会の質が問われている。東アジアのサッカーレベルの改善のためにも、関係者はそのことをしっかりと認識して対処して欲しい。

岡田武史
楢崎正剛
今野泰幸
山瀬功治
中村憲剛
安田理大
鈴木啓太
田代有三
駒野友一

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